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大阪地方裁判所 平成5年(ワ)5998号 判決

原告

自交総連東豊観光労働組合

右代表者執行委員長

伊東幸一

原告

松木正行

松村昭男

坂正治

谷口照雄

水澤勝三

松村高喜

奥田拓央

佐藤利之

道方義夫

伊東幸一

山下兼二

松下末宏

中田郁夫

右原告ら訴訟代理人弁護士

小林保夫

横山精一

雪田樹理

峯本耕治

三嶋周治

被告

東豊観光株式会社

右代表者代表取締役

山田安章

右訴訟代理人弁護士

清水伸郎

金坂喜好

山之内明美

主文

一  被告は、原告自交総連東豊観光労働組合に対し、金二二〇万円、原告松木正行に対し、金一二三万二五三三円、原告松村昭男に対し、金九九万三二六七円、原告坂正治に対し、金一〇六万三二六三円、原告谷口照雄に対し、金九五万九八七〇円、原告水澤勝三に対し、金九六万四〇四七円、原告松村高喜に対し、金一一〇万九五三四円、原告奥田拓央に対し、金一〇八万四三七六円、原告佐藤利之に対し、金一一四万八五〇四円、原告道方義夫に対し、金一〇一万一七五四円、原告伊東幸一に対し、金九六万〇二一三円、原告山下兼二に対し、金二一二万八九五五円、原告松下末宏に対し、金一一〇万九六一七円、原告中田郁夫に対し、金九七万九七一三円及び右各金員に対する平成六年一〇月一日から各支払済みに至るまで年五分の割合による金員をそれぞれ支払え。

二  被告は、原告松木正行に対し、金一万二九一五円、原告松村昭男に対し、金一万一九五四円、原告坂正治に対し、金一万一四五〇円、原告谷口照雄に対し、金一万一〇五七円、原告水澤勝三に対し、金九三三四円、原告松村高喜に対し、金八六二六円、原告奥田拓央に対し、金八四六九円、原告佐藤利之に対し、金八五三〇円、原告道方義夫に対し、金八三二六円、原告山下兼二に対し、金一万〇二一五円及び右各金員に対する本判決確定の日の翌日から支払済みに至るまで年五分の割合による金員をそれぞれ支払え。

三  原告らのその余の請求をいずれも棄却する。

四  訴訟費用は、これを一〇分し、その九を原告らの負担とし、その余を被告の負担とする。

五  この判決の第一項は、仮に執行することができる。

事実

第一  当事者の求めた裁判

一  請求の趣旨

1  被告は、原告らに対し、別紙(一)請求金目録請求金額欄記載の各金員及びこれに対する平成五年七月一七日から支払済みに至るまで年五分の割合による金員をそれぞれ支払え。

2  訴訟費用は被告の負担とする。

3  仮執行宣言

二  請求の趣旨に対する答弁

1  原告らの請求をいずれも棄却する。

2  訴訟費用は原告らの負担とする。

第二  当事者の主張

一  請求原因

1  当事者

(一) 被告は、肩書地に本店を設置し、一般旅客自動車運送事業を営む株式会社であり、本件訴えを提起した時点において、大阪府下に二か所、東京都に一か所の営業所を置き、従業員八六名、バス四九台を擁している。

(二) 原告自交総連東豊観光労働組合(以下「原告組合」という。)は、被告会社に勤務する労働者で組織された労働組合で、本件訴えを提起した時点において、一三名の組合員を擁しており、その余の原告ら(以下「原告ら」という。なお、原告組合及び原告らを併せて「全原告」という。)は、原告組合の組合員であり、被告に雇用されている。

2  被告の不当労働行為意思の存在

(一) 原告組合は、平成元年一二月二六日の定期大会において、自交総連を上部団体とし、これに加盟することを決定し、平成二年一月一二日、被告にその旨を通知した。ところが、被告は、これを嫌悪し、原告組合に対し、後記不当労働行為を、原告らに対し、後記様々な不利益取扱いを行った。

(二) 被告は、代表取締役山田安章(以下「山田社長」という。)のワンマン会社で、組合に対する対応の方針もすべて山田社長の一存で決定されている。山田社長は、反憲法的、前近代的感覚を有する人物で、労働組合の正当な組合活動についての理解を欠き、これを被告に対する敵対活動ととらえて、山田社長名で八回にわたって社告を貼り出した。その中には、次のような記載があった。

① 「特に自交総連系の労組員は道交法運送法は勿論、軽犯罪法に至るまで特に注意して対処し厳重処分の対象にならないよう注意して頂きたい。」、「自からの行為のみが正しく、企業のそれはすべて誤りであるというワンパターンの発想が二一世紀まで持続できるか否か………将来に向かって取り返しのつかない烙印を押され、老いて路頭に迷うことがないよう熟慮の上行動されることを希望します。」(平成二年一月二六日付け社告)

② 団体交渉の条件として上部団体である自交総連を「当社敷地内に入れることを禁止する。」(同年二月一四日付け社告)

③ 「平成二年二月一五日、「東豊労組………に幻滅を感じ労組を脱退した従業員に対して、企業の存続、繁栄に協力し、その環境の中で労働者の権利を主張する健全なる全東豊職組は彼等を暖かく迎え入れ社業の回復を計ることを希望する」(同月一五日付け社告)

④ 「自交総連労組員は余程の貢献度、功績が無ければ平均点を上廻ることは難しい。」、「業者からの指名のある乗務であっても会社側としては、信頼のできない人達の乗務を命ずることはできない。」(同年三月一日付け社告)

(三) また、山田社長は、取引先に文書を発送し、原告組合と山田社長の肝入りで結成された全東豊職員組合(以下「職組」という。)とを差別して、原告組合に対する嫌悪感をあらわにし、原告組合からの脱退や職組への加入を働きかけるだけでなく、原告組合の組合員を「斗う従業員」、職組の組合員を「協力する従業員」と指称するなど、原告組合に対する嫌悪感から、露骨な組合破壊を企てている。右の諸事情に徴すれば、被告が不当労働行為意思を有することは明らかである。

3  職組の結成と原告組合の組合員に対する脱退工作

被告は、以下に述べるように、原告組合を破壊するため、職組を結成させ、これを受け皿として、原告組合の組合員に対し脱退工作をした。

(一) 平成二年一月五日、原告組合の結成当時の委員長池亀一(以下「池亀」という。)ほか一名は、池亀ら一〇名の脱退届けを原告組合に提出した。

(二) 同月八日、被告の南営業所及び北営業所の業務用の掲示板に、職組結成発起人会開催通知書が掲示された。右結成発起人には、原告組合を脱退した右一〇名及び整備課長伊勢田孝一(以下「伊勢田」という。)ら三名の課長代理を含む一三名が名前を連ねていた。

(三) その後、被告は、原告坂正治(以下「原告坂」という。)に対し、後記のとおり、定年を理由とする解雇通告を行う一方で、同月一四日、同年二月一〇日で満五五歳となる原告組合の組合員山本巌(以下「山本」という。)に対し、「組合員であり続けるならば、二月一〇日の誕生日で辞めてもらう。」旨通告し、同年一月一六日には山田社長も山本に対して同旨を述べたのに対し、山本が原告組合を脱退する旨回答すると、山田社長は、直ちに右通告を撤回した。

(四) 山田社長は、前記のとおり、四回にわたる社告で、原告組合の組合員と職組の組合員とを差別する意思を明確にし、原告組合からの脱退を慫慂し、職組への加入を求めた。

(五) 同年三月一〇日、山田社長は、原告組合を脱退後いずれの組合にも加入しないでいた一一名の従業員を前記南営業所三階の待機室に集め、「中立であり続けると原告組合のメンバーと同じように差別する。態度を明確にしなさい。」などと申し向けたので、これら一一名の従業員は、いずれも職組に加入するなど、多くの組合員が原告組合からの脱退を余儀なくされた。

(六) また、同月、原告組合の書記長であった河内進(以下「河内」という。)が原告組合を脱退し、職組に加入したが、このことについて、原告組合が、職組の運営委員長前川憲彦(以下「前川」という。)に対し、「原告組合の役員であった者の加入は認めない方針ではなかったのか。」と質したところ、前川は、「社長が入れるというんで、しゃあない。」などと答えた。

(七) 同年四月、被告の人事課長三浦某(以下「三浦」という。)は、同年四月、新規採用者との面接において、職組への加入を採用条件としている旨述べた。

4  原告組合及び原告ら組合員に対する不利益取扱い等不当労働行為

(一) 原告坂に対する不当解雇

被告の就業規則においては、定年を五五歳とする旨定められていたが、実際には五六歳まで定年を延長するとの慣行があった。しかるに、被告は、平成二年二月四日、原告坂に対し、同月一二日をもって定年により解雇する旨通知した。被告は、同年一一月、右解雇を撤回したが、右解雇通告は、原告坂が原告組合の組合員であることを嫌悪してなされた不当労働行為であることは明らかである。

(二) 原告らに対する業務内容における差別

(1) 被告は、原告らに対し、平成二年三月一六日、同月一七日から別表3記載のとおり、担当車両を観光目的のサロンカーから送迎目的のマイクロバスに変更し、業務内容も、送迎業務に変更する旨の命令(以下「本件担当車両変更」という。)を発した。

(2) 原告らは、もともと観光バスの運転を業務内容としていた。担当していた観光用サロンカーは、一〇数名から二〇数名定員で、テレビ、冷蔵庫、カラオケシステム等を完備し、シャンデリア等の装飾が施された車両で、少人数グループの観光用として用いられる貸切りのワンマンカーであり、その業務内容は、月平均七ないし九回の一泊二日から二泊三日の観光旅行の運転業務を主としたものであった。したがって、本件担当車両変更は、観光に使用し得ない送迎用バスに変更するという内容であり、単なる担当車両の変更にとどまらず、業務内容の重大な変更を意味するものであった。

(3) そして、本件担当車両変更は、原告らに対し、次のような不利益をもたらした。すなわち、被告においては、一泊当たり一〇〇〇円の宿泊手当て、一キロメートルにつき二円の走行キロ手当て及び残業手当てが支給されているが、送迎業務には宿泊を伴う業務がなく、走行距離も短く、また、残業もほとんどないため、本件担当車両変更による原告らの減収は、平成二年の四月ないし六月だけをとってみても、八万円から二〇万円に及んでいる。さらに、観光バス業務に付随する顧客からの寸志、土産物店からの紹介料も、全く入らないことになり、この分の減収も月平均一〇万円程になる上、観光バス乗務において、業者などから支給される昼食や夕食の恩恵に与かることもなくなった。

(4) また、観光バス業務に従事しているときは、その都度違った観光地を目的地としていたのに対し、送迎業務では、市街地の同一行程の往復を繰り返す単純作業となるため、疲労感が増幅されるし、同一の労働時間であっても実質的な密度が高く、精神的、肉体的疲労度が格段に増加する。

(5) のみならず、被告においては、入社後二、三年はライトバンの運転もしくは送迎業務に就き、三年目位から徐々に日帰り観光や一般宿泊業務に従事するようになり、その後担当車両が与えられ、泊まりを含んだ観光業務に就く慣行となっている。このように、貸切観光バスの乗務は、運転手にとって最高の地位となっているのであるから、本件担当車両変更は、原告らに多大の屈辱感を与え、その名誉を著しく傷つけるものである。

(6) 被告は、何ら合理的根拠がないにもかかわらず、このような取扱いをしたのであるが、その真意は、原告組合の組合員に対する露骨な兵糧攻めにより、原告組合の弱体化を狙ったものであることは、前記各社告の記載からも明らかである。

(7) なお、被告は、平成二年一一月六日に発した業務命令で、原告らの担当車両を従前の車両に戻すことを指示し、本件担当車両変更にかかる業務命令を撤回した。しかし、被告は、その後も、原告らに与える観光業務の回数や行き先について、職組の組合員よりも不利に扱ったり、定期送迎業務を職組の組合員よりも多く割り当てるなどの差別を続けている。

(三) 団体交渉の拒否及び不誠実な団体交渉

(1) 原告組合は、被告に対し、平成二年五月二四日、七月二日、同月五、六日、同月一九日、八月一〇日、同月二一日、同月二九日、九月一五日及び同月二五日に団体交渉を申し入れたが、被告は、これをことごとく拒否した。しかも、右のうち、同年五月二四日の申入れに対し、被告は、「本年度の団体交渉は終了しましたので申込みは返却致します。以後も同様です。」などと団体交渉申入書に付記して、原告組合に突き返し、また、同年七月一九日の申入れに対し、被告は、「受けるつもりはありません。」と回答したりするなど、徹底して団体交渉の申入れを拒否し続けてきた。

(2) 被告は、団体交渉に応じるかのような態度を示し、同年一〇月一六日に交渉に臨んだ。しかし、右団体交渉は、原告組合が緊急の議題の話合いを求め、同年九月二五日に同月二八日の開催を要求したのに対し、被告は、「御要望には都合がつきません。」と返答した上、右一〇月一六日の午後四時から五時までと約二〇日も引き延ばして指定し、また、到底実質的な交渉が不可能な一時間という時間を示してきた。そして、被告は、前記要求どおり九月二八日の開催を求めた原告組合の再度の要求にも応じなかった。さらに、被告においては、山田社長が出席しなければ実質的な交渉が行えず、被告自身そのことを認めていたにもかかわらず、同年一〇月一六日以降の団体交渉には、山田社長は出席せず、何らの決定権限も有しない奥田部長などが被告の担当者となって団体交渉に臨み、原告組合の山田社長の出席要求を拒否し続けた。

(3) 被告は、同年一〇月三〇日の団体交渉において、自ら前記不当労働行為を継続しながら、相互の立場を尊重し、早急に話合いを行うなどの内容の協定書の取り交わしを求めたり、その後団体交渉の時間や参加人数、開催場所等を定めた「団交ルール」の策定を提案した。しかし、自ら誠実な団体交渉を行わないで、このような提案をすること自体が、実質的な団体交渉を阻害する意図であることは明らかであるし、また、団体交渉の議題となった一時金や定期昇給の差別等の協議に必要不可欠な資料の提供に応じないなど、同年一〇月一六日以降形式的には団体交渉が開催されてはいたものの、被告の不誠実な対応のため、何ら実質的な協議はなされなかった。

(四) 夏季及び冬季一時金差別

被告は、平成二年夏季一時金から平成五年冬季一時金に至るまで、原告らに対し、別紙(三)一時金差額一覧表各支給額欄記載の一時金を支払ったが、これらは、いずれも平成元年に支給された夏季及び冬季一時金に比して、大幅に減額されたものであった。

被告は、右減額支給について、個々の従業員に対する査定に基づくもので、原告組合の組合員を差別したものではないとする。しかし、原告組合の調査に回答した非組合員の全員が平成二年の夏季一時金は平成元年に比べて増加した旨述べているし、原告組合の組合員全員が減額の対象になっていること、被告における夏季一時金は、昭和六二年に一度減額されたことがある以外は、前年より増加していたし、右減額の際、被告からその理由が述べられていたにもかかわらず、平成二年以降の減額については何らの説明もなかったことに照らせば、右平成二年以降の夏季及び冬季一時金の減額が、原告ら原告組合の組合員に対する不利益取扱いであり、原告組合に対する支配介入行為に該当することは明らかである。

(五) 街頭宣伝活動を理由とする自宅待機処分等

(1) 被告は、原告らを含む原告組合の組合員らが、別紙(四)街頭宣伝活動一覧表記載の日(平成二年)に街頭宣伝活動を行ったことが就業規則六三条一項一号、一二号、二項二二号に該当することを理由に、原告らに対し、同一覧表自宅待機期間欄記載の期間、乗務停止・自宅待機とし、自宅に電話をかけて行う点呼に応じなければ欠勤とみなすとともに、右期間中被告が貸与した書物を熟読し、その成果を書面で提出するよう命じる旨の処分(以下「本件自宅待機処分」という。)を行った。そして、被告は、別紙(五)街頭宣伝賃金カット額一覧表記載の原告らに対し、同原告らが右点呼に応じなかったことを理由に、同表賃金カット欄記載の賃金を支給しなかった。

(2) しかしながら、右各街頭宣伝活動は、被告の一連の不当労働行為に対抗し、原告組合の組合員の経済的地位の向上を目的に行われたものであり、手段、方法は正当な組合活動の範囲内にあり、活動の場所、態様においても社会的に相当であるから、被告の主張する就業規則違反が存在しないことは明らかである。

(3) さらに、被告の就業規則においては、出勤停止や乗務停止の処分は定められているものの、自宅待機という処分は規定されておらず、ましてや貸与された書物(それも、「ラーメン店経営のすべて」、「自己啓発」などといった、業務とは無関係な書物)を熟読し、成果を文書で提出するなどの処分は存在しない。被告は、就業規則に定めのない懲戒処分を行うことができないから、その点でも、右処分は違法、無効というべきである。

(4) 以上のとおり、前記街頭宣伝活動は正当であり、本件自宅待機処分は違法、無効である。したがって、被告の行った前記賃金の減額は無効であるが、それにとどまらず、被告の右各行為は、原告組合やその組合員に対する一連の不当労働行為の一環として行われたものというべきである。

(六) 原告組合の事務所の備品の破壊、搬出と組合旗撤去

(1) 山田社長は、平成二年八月二七日午前九時五三分ころ、伊勢田とともに南営業所三階にある原告組合事務所に入り、原告坂、同松下末宏(以下「原告松下」という。)の制止を無視して、同事務所西側壁面に取り付けてあったエアコン操作用スイッチ板の配線を伊勢田に切断させ、エアコンを使用不能にした。さらに、被告は、同事務所に隣接する従業員待機室に設置されたクーラーのメインスイッチ付近に「組合のものではないから使用するな」と書いた紙片を貼り付け、右待機室から冷気を取ることを禁止した。そのため、右事務所は暑さのため在室が困難になり、また、冬季には組合員が暖房器具を用意しなければならなくなるなど、原告組合は、活動の拠点を奪われ、日常活動に著しい支障を受けた。

(2) 山田社長は、右エアコンの損壊に引き続き、原告坂、同中田郁夫(以下「原告中田」という。)、同松下の制止にもかかわらず、「これは会社のものやから」などと告げて、同事務所内に設置され、原告組合の使用に供されていたコピー機を整備課員に命じて搬出させた。しかし、右コピー機は、被告が新しい機械を購入した際、原告組合が被告が使わなくなった古いものの供与を受け、六万円余りの修理費をかけて、正常に使用できるようにし、機関紙の作成等に使っていたものであった。被告の右行為により、原告組合は、新たなコピー機を購入せざるを得なくなり、その代金四〇万円の支払いを余儀なくされた。

(3) 奥田部長は、同年九月一日午前九時四〇分ころ、伊勢田とともに原告組合事務所に赴き、ソファーの返還を要求し、後にやって来た山田社長とともに、原告松下を待機室に一〇分余り軟禁した後、対応に窮した組合員を尻目に、ソファーを搬出してしまった。

(4) 原告組合は、南営業所三階の原告組合事務所南側ベランダに五、六本の、北営業所の南西側及び東側に数本の組合旗を掲揚していた。南営業所三階は、右事務所、従業員の待機室及び名目上の社宅とされているが、顧客が出入りしたり、営業活動のために頻繁に人が通るということもなく、また、右ベランダは、火災等非常時の通路とされているわけでもない。このような状況は、北営業所においても同様である。したがって、これらの場所に組合旗を掲揚しても被告の施設管理上何らの問題もない。

しかるに、被告は、同年五月三日、施設管理権を根拠に、原告組合に対し、当時二本しか掲揚されていなかった南営業所の組合旗の撤去を要求し、これに応じない場合には、被告が強制的に除去する旨通告してきた。これに対し、原告組合は、組合旗の掲揚は、被告の受忍義務の範囲内である旨反論したところ、北営業所の机の引き出しに入れてあった組合旗が紛失するという事態が発生した。

その後、被告は、同年八月一八日、二九日、九月六日、平成三年一月二一日と、繰り返し組合旗の撤去を求め、特に右八月一八日、二九日の要求に関しては、被告自ら組合旗を撤去するという実力行使に及んだ。

(七) 平成三年四月の昇給差別

原告組合は、平成三年五月二日に行われた団体交渉において、被告に対し、平成三年度の定期昇給についての回答を求めたところ、被告は、同月一四日、回答を示した。その内容は、全従業員の平均昇給額が一万五七九五円、昇給率が固定給の5.92パーセントであるとするものであった。ところが、原告組合の組合員である別紙(六)昇給差別額一覧表原告名欄記載の原告の昇給額は、同表実際昇給額欄記載のとおりであった。右原告組合の組合員の昇給額によると、その平均昇給率は5.38パーセントとなり、全従業員の平均支給率5.92パーセント、非組合員の平均昇給率6.01パーセントを著しく下回る。よって、原告組合の組合員と非組合員との間において、昇給率、昇給額に差別が存することは明らかであり、その不当労働行為性は明白である。

(八) 救済命令発令後の不当労働行為(賃金カット)

(1) 大阪府地方労働委員会は、平成四年三月三一日、被告の不当労働行為に対する原告組合の救済申立てにつき、原告組合の主張を全面的に認める救済命令を発令した。原告組合は、右救済命令を実現して、被告との争議の早期解決をはかることや原告組合の組合員三名が大阪府吹田警察署から受けた弾圧に抗議することを目的として、原告組合の臨時大会を同年六月一二日に開催することとし、同月八日ころ、原告伊東が被告の常務取締役兼運行部長である山田好宏(以下「山田常務」という。)に対し、同月一二日に原告ら全員が年次有給休暇を取得したい旨申し出たところ、山田常務は、繁忙期なので休暇を認めることはできない旨回答した。そこで、原告組合は、臨時大会の開催を同月一九日に延期することとし、原告らは、同月一四日から一八日にかけて、同月一九日の有給休暇届を出した(なお、原告中田、同松下は、同日が公休日であったため、休暇の届けはしていない。)。これに対し、奥田部長は、同月一八日午後二時ころ、原告松下に対し、臨時大会の開催が一斉休暇戦術に当たり、有給休暇の取得は認めない旨記載した通知書を手交し、原告組合の執行委員長である原告中田に渡すよう指示した。しかし、原告中田は、当日不在で、右通知書を読んだのは同月一九日(臨時大会開催の当日)であり、そのまま臨時大会を開催した。

(2) 被告は、同月二四日、臨時大会開催当日が公休日であった原告中田、同松下を除くその余の原告ら一一名に対し、賃金カットを行った。なお、当日組合活動をしなかった原告伊東幸一(以下「原告伊東」という。)や吹田警察署への抗議に参加していなかった原告山下に対しては、カット分の賃金が後日支払われた。原告中田、同松下及び同伊東を除くその余の原告らのカット額は、別紙(二)原告別損害一覧表臨時大会賃金カット額欄記載のとおりである。

右賃金カットについては、阿倍野労働基準監督署や茨木労働基準監督署から被告に対し、右カット分を支給するよう指導がなされたにもかかわらず、被告は、この指導に応じなかった。

(3) 原告らによる右有給休暇の取得は、一斉休暇戦術に当たらないばかりでなく、原告らは、これまでにも地方労働委員会の審問や組合の臨時大会等に出席、参加するに際し、一斉に有給休暇を請求し、被告もその都度これを認めていたし(その詳細は別表4一斉休暇取得一覧表記載のとおり)、右臨時大会参加のための有給休暇の届けの提出に際しても、被告は、何らの異議を述べなかったことにかんがみれば、被告による右賃金カットは、原告組合への攻撃を意図した不当労働行為に該当することは明らかというべきである。

(九) 原告松木正行(以下「原告松木」という。)に対する不当労働行為

(1) 原告松木は、大阪府吹田市南金田所在の被告の北営業所において、観光バス運転手として勤務していた。被告は、平成三年六月一六日ころ、原告松木に対し、同月一八日から大阪市西成区にある被告の南営業所の整備課の手伝いをするようにとの業務内容の変更命令を発し、以後約三か月にわたり、原告松木を本来の観光業務に就かせることなく、レンタカーの洗車、回送等の業務に従事させた。

(2) 被告は、平成四年一〇月九日、原告松木に対し、原告松木が同年五月一四日に被告の運行管理代務者に暴行を加え負傷させたこと及び同月二八日に入庫点呼義務に違反したことを理由に、同年一〇月一〇日から七日間の出勤停止命令を発し、同月一〇日から一七日までの七労働日(一公休日を除く)につき、原告松木の就労を拒否し、右期間の賃金九万〇四〇五円の支払いをしない(なお、右期間の賃金の支払期日は、同月二六日であった。)。

(3) しかしながら、被告の右配置転換命令は必要性を欠き、また、右出勤停止処分も、理由とされた事実が存在しない。また、そもそもこれらの命令や処分は、被告が原告組合を嫌悪して行った不当労働行為に該当することは明らかというべきであるから、いずれにしても、違法、無効というべきである。

5  被告に対する請求根拠

(一) 原告組合関係

被告は、前記3、4記載のように原告組合及び原告らを含む原告組合員に対し、様々な不当労働行為を行い、右不当労働行為は不法行為を構成するから、原告組合の被った後記損害を賠償する責任がある。

(二) 原告ら関係

(1) 被告は、原告らに対し、前記4(一)ないし(九)記載の不当労働行為を行い、右不当労働行為は不法行為を構成するから、原告らの被った後記損害を賠償する責任がある。

(2) 被告においては、観光バス運転業務に従事する運転手について、寸志、紹介料収入の存在、あるいはこれらの収入、利益を得ることのできる地位は、個別の運転手と被告との労働契約の内容(少なくとも慣行上の権利として確立している。)になっている。

よって、被告は、原告らに対し、前記4(二)の業務内容における差別をし、もって原告らに寸志、紹介料収入を得させなかったことは、右労働契約の不履行に当たり、原告らの被った後記6(二)(2)の損害を賠償する責任がある(予備的請求)。

(3) 前記4(五)の本件自宅待機処分、(八)の有給休暇を付与しなかった行為及び(九)の出勤停止処分はいずれも無効であるから、被告のなした右賃金カットはいずれも理由がない。

よって、右原告らは、被告に対し、雇用契約に基づき、右未払いの賃金請求権を有する。

6  全原告の不法行為等による損害

(一) 原告組合

(1) 被告は、原告組合が自交総連に加盟したことを嫌悪し、職組の結成、原告組合の組合員に対する脱退の強要、脱退に応じない原告組合の組合員に対する解雇、配置転換、配車や一時金、賃金における差別、団体交渉拒否、原告組合に対する不当な介入や干渉などの不当労働行為を重ねた。これに対し、原告組合は、仮処分の申請、救済申立て、運輸局や労働基準監督署、警察署等への要請活動、これらの活動に必要な弁護団会議の実施、宣伝活動等を行ってきたが、これらの活動を行うにつき、次の費用の支出を余儀なくされ、損害を被った。

(2) 稼働人員に要した費用

被告の右不当労働行為に対抗する活動のため、弁護士延べ三八六名、組合員延べ一二八〇名の人員を要した。原告組合は、これらの活動に参加した弁護士及び組合員に対し、一回の参加につき一万円を補償することとしたため、合計一六六六万円の損害を被った。

(3) 対抗措置に要した費用

原告組合は、被告の不当労働行為に対抗する措置を講じるため、別表2記載のとおり、合計二七三万七五五〇円の支出を余儀なくされ、同額の損害を被った。

(4) 慰謝料

原告組合は、被告が原告組合に対して行った不当労働行為により、多大の精神的苦痛を被ったが、これを金銭に評価すると五〇〇万円を下らない。

(5) 弁護士費用

原告組合は、被告の不当労働行為に対抗するため、弁護士に依頼して本件訴訟を提起せざるを得なかったが、これに要する弁護上費用は五〇〇万円を下らない。

(二) 原告らの損害

(1) 各種手当ての減収による損害

原告らは、本件担当車両変更により、別紙(七)年度別差額金額一覧表記載のとおり、各種手当ての減収により、これと同額の損害を被った。同表記載の金額は、平成二年から平成五年までの残業手当て、宿泊手当て、走行キロ手当て(原告らの給与明細書記載の金額)と差別開始の前年の平成元年の各金額と比較し、その差額を計算して算出したものである(なお、各種手当ては、基本給の上昇にともなって、増額されるものであるから、本来であれば、同表記載の金額を超える損害が生じているはずであり、同表記載の金額は、最低限を計上したものにすぎない。)。

(2) 寸志、紹介料の減収による損害

右業務内容差別により、原告らは、別紙(八)寸志、紹介料損害金計算表記載のとおり、財産的損害を被った。

右損害金の算出方法は、原告松木が全く観光バス業務に従事できなかった平成二年三月一七日から同年一一月五日までの7.8か月間については、差別開始前一か月(三〇日)当たりの寸志、紹介料(記録を残していた組合員についてはその記録により、記録を残していない組合員については記録を残していた者の金額の平均値として計算した。)に7.8を乗じ、観光バス業に就いてはいたものの、行先差別が続いていた同年一一月六日から平成六年六月末日までの44.4か月間については、右一か月当たりの金額から平成五年度に原告組合の組合員が取得した一か月当たりの金額を控除した金額に44.4を乗じたものである。

(3) 夏季及び冬季一時金差別による損害

原告らは、平成二年の夏季以降平成六年六月末日まで別紙(三)一時金差額一覧表記載のとおり、夏季及び冬季の一時金につき、不当に差別による減額支給を受けており、同表差額合計欄記載の金額相当の損害を被った。右損害の額は、これまで被告が支給した一時金が特段の事情のない限り前年に支給された金額を下回ることがなかったことにかんがみ、差別開始前の平成元年の夏季及び冬季一時金の額を基準とし、その差額を主張するものである。

(4) 街頭宣伝活動を理由とする自宅待機処分及び同処分違反を理由とする賃金カットによる損害

原告らが受けた右処分は、正当な組合活動に対して行われた違法・無効な処分である。よって、別紙(五)街頭宣伝賃金カット額一覧表記載の原告らは、同表賃金カット額欄記載の金員相当の損害を被った。

(5) 平成三年四月の昇給差別による損害

原告らは、右昇給差別により、別紙(六)昇給差別額一覧表記載のとおり、非組合員の平均昇給率6.01パーセントに基づいて算出した金額と同表記載の原告らが実際に支給を受けた金額との差額の損害を被った。

(6) 平成四年六月二四日の賃金カットによる損害

原告らは、右賃金カットにより、別紙(二)原告別損害一覧表臨時大会賃金カット額欄記載の賃金の支払を受けていないので、右金員相当の損害を被った。

(7) 原告松木に対する出勤停止処分に伴う賃金カットによる損害

原告松木は、右賃金カットにより、九万〇四〇五円の賃金の支払を受けていないので、右金員相当の損害を被った。

(8) 慰藉料

原告松木を除くその余の原告らは、前記4(四)ないし(八)の不法行為により、多大の精神的損害を被ったが、その慰藉料は、金二七〇万円を下らない(一か月当たり五万円として算定)。

また、原告松木は、前記4(四)ないし(九)の不法行為により、多大の精神的損害を被ったが、その慰藉料は、金五七〇万円とするのが相当である。

7  付加金の請求

右原告らは、被告に対し、平成四年六月二四日の賃金カットにかかる金員と同額の付加金(労基法一一四条)の支払を求める。

8  よって、全原告らは、被告に対し、それぞれ請求の趣旨記載の金員の支払を求める。

二  請求原因に対する認否

1  請求原因1は認める。

2(一)  同2(一)のうち、原告組合が平成二年一月一二日、被告に自交総連に加盟する旨通知したことは認め、原告組合が平成元年一二月二六日の定期大会において、自交総連に加盟することを決定したことは不知、その余は争う。

(二)  同2(二)のうち、山田社長が全原告主張の記載のある各社告を貼り出したことは認め、その余の主張は争う。

(三)  同2(三)のうち、被告が取引先に対し、全原告主張のような文言を記載した文書を送付したことは認め、その余は争う。

3(一)  同3冒頭の主張は争う。

(二)  同3(一)、(二)は不知。

(三)  同3(三)のうち、山本巌が平成二年二月一〇日で満五五歳となることは認め、その余は争う。

(四)  同3(四)、(五)は争う。

(五)  同3(六)は不知。

(六)  同3(七)は否認する。

4(一)  同4(一)のうち、被告が原告坂に対し、雇用契約終了の意思表示を撤回したことは認め、その余は争う。

(二)(1)  同4(二)(1)のうち、被告がその主張の日に本件担当車両変更を行ったことは認め、その余は否認する。なお、⑨原告松村昭男、⑩原告松村高喜、⑪上野義己(以下「上野」という。)が従来乗務していた車両は、いわゆる「サロンカー」ではない。また、⑤原告谷口照雄(以下「原告谷口」という。)、⑫原告水澤勝三(以下「原告水澤」という。)、⑬郡司弘之(以下「郡司」という。)が新たに乗務することとなった車両はいわゆる「送迎車」ではない。なお、従前より担当車両の変更はおりにふれて行われてきたところであり、しかも担当車両といっても当該車両のみに乗車するわけではなく、他の車両に乗務することも多いものである。また、原告らは、担当車両の変更あるいは業務内容の変更を「処分」と位置づけているが、これは単なる業務内容の変更(業務上の指示)にすぎない。

(2) 同4(二)(2)のうち、被告の観光用サロンカーがテレビや冷蔵庫、カラオケシステム等を完備し、少人数グループの観光用として用いられる貸切りのワンマンカーであることは認め、その余は争う。

(3) 同4(二)(3)ないし(6)は争う。

観光バス業務と送迎業務は、宿泊の有無や残業時間、走行距離が異なるため、これに対応する手当ての支給額に差が出てくるものの、その間に優劣関係があるものではなく、被告は、従業員に対して、必要に応じて、いずれの業務をも命じることができる。

(4) 同4(二)(7)のうち、被告が同年一一月六日に発した業務命令で原告組合の組合員に対して変更前の担当車両への乗務を命じたことは認め、その余は争う。

(三)(1)  同4(三)(1)のうち、原告組合が被告に対し、平成二年五月二四日、七月二日、同月五、六日、同月一九日、八月一〇日、同月二一日、同月二九日、九月一五日、同月二五日に団体交渉を申し入れたこと、同年五月二四日の申入れに対し、被告が「本年度の団体交渉は終了しましたので申込みは返却致します。以後も同様です。」などと団体交渉申入書に付記して原告組合に交付したこと、同年七月一九日の申入れに対し、被告が「受けるつもりはありません。」と回答したことは認め、その余は争う。

(2) 同4(三)(2)のうち、被告が同年一〇月一六日の団体交渉に応じたこと、原告組合が同年九月二五日に同月二八日の団体交渉開催を要求したのに対し、一〇月一六日の開催を指定したこと、同年一〇月一六日以降の団体交渉には山田社長が出席せず、奥田部長などが被告の担当者となって団体交渉に臨んでいたこと及び原告組合が山田社長の出席を要求していたことは認め、その余は争う。

奥田部長は、一定範囲での裁量も与えられて団体交渉の場に出席しており、原告組合の要求にその場で即答しなくても、何ら不当性はないものである。交渉事項の性質上、即答できないことは、普通のことであり、原告組合の要求を聞いて持ち帰り、山田社長に報告して原告組合に回答したことがあったとの一事をもって、誠実に団体交渉に応じていないことにはならない。

また、現に、被告は、原告組合からの団体交渉の要求に対して、誠実に対応してきたものである。被告と原告組合との正常かつ健全な労使関係を確立するために、被告も努力をし、個々の交渉事項について、解決してきたものである。原告組合が、緊急を要する案件と言えば、それに合わせた形で回答及び団体交渉等の対応をしてきたものである。

(3) 同4(三)(3)は争う。

(四)  同4(四)のうち、原告らに対する平成元年夏季一時金から平成五年冬季一時金の支給額が、別紙(九)一時金訂正一覧表記載の額を除いて、別紙(三)一時金差額一覧表各支給額欄記載の金額であったことは認め、原告らの主張は争う。

被告における賞与の決定は、従業員の事故、苦情、勤務態度等の査定要素の評価により、決定されているものであるから、原告らが支給を受けた賞与が平成元年の賞与を下回っていたとしても、そのことが原告らに対する差別となるものではない。

(五)(1)  同4(五)(1)のうち、原告らが別紙(四)街頭宣伝活動一覧表処分理由となった街頭宣伝活動を行った日欄記載の日に街頭宣伝活動を行ったこと、被告が原告らに対し、右街頭宣伝活動につき、就業規則六三条一項一号、一二号、二項二二号に該当することを理由に乗務停止及び自宅待機処分を行ったこと、自宅待機期間が同表自宅待機期間欄記載の期間であったこと(ただし、原告松村高喜を除く原告らの自宅待機の対象となった日は、正確には、別紙(三)記載のとおりである。)、被告が原告らに対し、自宅待機期間中被告が貸与した書物を熟読し、その成果を書面で提出するよう命じたこと及び被告が原告らに対し、原告らが右自宅待機処分に反して出勤し点呼に応じなかったことを理由に、原告別損害一覧表街頭宣伝賃金カット額欄記載の賃金を減額したことは認め、その余の主張は争う。

(2) 同4(五)(2)ないし(4)は争う。

(六)(1)  同4(六)(1)のうち、被告側が平成二年八月二七日午前九時五三分ころ、南営業所三階にある原告組合事務所の西側壁面に取り付けてあったエアコン操作用スイッチ板の配線を切断したことは認め、その余は争う。

(2) 同4(六)(2)のうち、山田社長が同日、同事務所内に設置され、原告組合の使用に供されていたコピー機を整備課員に命じて搬出させたことは認め、その余は争う。

(3) 同4(六)(3)のうち、奥田部長が同年九月一日午前九時四〇分ころ、右原告組合事務所からソファーを搬出したことは認め、その余は争う。

(4) 同4(六)(4)のうち、原告組合が同事務所南側ベランダに組合旗を掲揚していたこと、被告が施設管理権を根拠に原告組合に対し、右南営業所の組合旗の撤去を要求したこと及び同年八月一八日、二九日に被告自ら組合旗を撤去したことは認め、その余は争う。

原告組合が組合旗を掲揚していた右南営業所三階のベランダは、被告が原告組合に貸与している組合事務所とは別である上、非常時の避難路として障害物の設置が制限されている場所であるため、被告は、施設管理権に基づき、その撤去を求めたものであるし、北営業所においては、組合旗が隣家所有の塀に針金で結ばれ、隣家にはみ出して掲揚されていたため、隣家から抗議を受けたなどの理由から、被告が撤去したにすぎない。

(七)  同4(七)のうち、原告組合が平成三年五月二日の団体交渉で被告に対して平成三年度の定期昇給についての回答を求めたのに対し、被告が同月一四日全従業員の平均昇給額が一万五七九五円、昇給率が固定給の5.92パーセントであり、原告組合の組合員の昇給額が別紙(六)記載のとおりである旨の回答を示したことは認め、その余は争う。

被告の定期昇給額の決定は、各従業員の査定要素の評価により決定されているものであるから、原告らの定期昇給額が他の従業員の昇給額を下回っていたとしても、そのことが原告らに対する差別となるものではない。

(八)(1)  同4(八)(1)のうち、大阪府地方労働委員会が平成四年三月三一日に原告組合の主張を認める内容の救済命令を発令したこと、原告組合の組合員が吹田警察署に抗議しようとしていたこと、原告組合の組合員が同月一四日から一八日にかけて同月一九日の有給休暇届を出したこと、原告中田及び原告松下が休暇の届けをしなかったこと、奥田部長が同月一八日午後二時ころ、原告松下に対し、臨時大会の開催が一斉休暇戦術に当たり、有給休暇の取得を認めない旨記載した通知書を手交したことは認め、その余は争う。

(2) 同4(八)(2)のうち、被告が同月二四日原告中田及び原告松下を除いた原告ら一一名に対し、賃金カットを行ったこと、当日組合活動をしなかった原告伊東や吹田警察署への抗議に参加していなかった原告山下に対してはカット分の賃金が後日支払われたこと、原告中田、同松下及び同伊東を除くその余の原告らのカット額が別紙(二)原告別損害一覧表臨時大会賃金カット額欄記載の金額であったこと及び原告組合が右賃金カットが労基法三九条に違反する旨阿倍野労働基準監督署に申し入れたことは認め、その余は争う。

(3) 同4(八)(3)は争う。

(九)(1)  同4(九)(1)のうち、原告松木が被告の北営業所に観光バス運転手として勤務していたこと、被告が平成三年六月一六日ころ、原告松木に対し、同月一八日から南営業所の整備課の手伝いをするよう命じたことは認め、その余は争う。

(2) 同4(九)(2)のうち、被告が平成四年一〇月九日、原告松木に対し、同原告が同年五月一四日に被告の運行管理代務者に暴行を加え負傷させたこと及び同月二八日に入庫点呼義務に違反したことを理由に、同月一〇日から七日間の出勤停止命令を発したこと、被告が同月一〇日から一七日までの七労働日(一公休日を除く)につき、原告松木の就労を拒否し、右期間の賃金九万〇四〇五円の支払いをしなかったこと、右期間の賃金の支払期日が同月二六日であったことは認め、その余は争う。

なお、原告松木は、南営業所で整備課の手伝いをするようになった後も、土曜、日曜日には、観光業務に従事しており、被告が原告松木を観光業務に就かせなかったわけではない。

(3) 同4(九)(3)は争う。

5  同5は争う。

6(一)  同6(一)、(二)は争う。なお、別紙(七)年度別差額金額一覧表のうち、別紙(二)年度別手当金額訂正表記載の金額を除くその余の金額は認める。右訂正表記載の手当については同記載の金額が正しい。

(二)  原告組合の損害について

仮に、被告に不当労働行為があったとしても、その是正は、労使間の団体交渉によるのが本来の在り方というべきであり、運輸局や労働基準監督署等本件と直接関係のない官公署への要請活動や地方労働委員会の審問の傍聴出席については、原告組合の活動上必要でもないし、ましてや、原告組合が、これらの活動に参加した組合員に一回一万円の補償を行うなど、何らの根拠もないものであり、これらの活動に要した費用は、被告に損害として請求できる筋合いのものではない。原告組合は、他にも飲食代金などを損害として請求しているが、いずれも、もともと損害足りえないものであったり、被告の行為と相当因果関係を欠くものであることは明らかであるから、原告組合の損害の主張は失当である。

(三)  各種手当及び寸志、紹介料の減収による損害について

(1) 観光バス業務と送迎業務とは前者が運行する経路が日によって異なり、運転時間や宿泊の有無も一定でないのに対し、後者は、宿泊もなく、運転経路や労働時間が一定であるなど規則的である。このように、両者は性格が異なるのであり、いずれが勝るともいえないのであるから、被告としては、必要に応じて従業員をどちらの業務に従事させることもできるというべきである。

そして、原告ら主張の各種手当は、被告の賃金体系上、走行距離の多寡、勤務時間、宿泊の有無等に応じて、機械的に決められるものであって、これらの労働条件に対応しているのであるから、運転手が送迎業務に就いた結果、これらの手当が減少したとしても、そのことをもって損害が生じたとすることはできないというべきである。

また、観光バス業務から離れることによって、原告らが受け取る寸志や紹介料が減少したとしても、寸志、紹介料は、もともと被告とは無関係に支払われるものであり、また、支払いの有無や金額も不確定なのである。このように、原告らが被告との雇用契約上請求し得ない金員が減少したとしても、これを損害とすることはできない。

(2) さらに、原告らは、損害の算定に当たって、平成元年の収入額を基準としているが、同年は、観光バス業界にとって、最も景気が良かった年であり、平成二年以降業績は悪化し続け、観光バスの稼働率も低下している。このことを考えると、最高の業績をもたらした平成元年の収入額を基準に、その後の原告らの損害を算定することの不当性は明らかである。

(四)  夏季、冬季一時金差別による損害について

原告らは、平成元年に支給された各賞与の額を基準に、損害を算出している。しかしながら、その後の被告の業績の悪化に伴い、他の従業員の賞与は減少しているのであるから、平成元年の支給額から損害を算定することは誤りである。

(五)  平成三年四月の定期昇給差別による損害について

被告は、定期昇給に当たって、個々の従業員の事故、苦情、遅刻や勤務態度などの査定要素に基づき、昇給額を決定しており、原告らの昇給額が他の従業員に比して低額だったのは、このような方法で決定した結果にすぎない。原告らは、組合員以外の従業員の平均昇給率を基準として、一律に損害を算定することは誤りである。また、原告坂は、嘱託社員であり、その昇給額は正規の従業員の半額であるにもかかわらず、これを同様の昇給率に基づいて算定することは許されない。

7  同7は争う。

三  被告の主張

1  原告坂に対する不当解雇について

被告の就業規則では、定年を満五五歳とする旨規定されており、被告は、原告坂に対し、被告の定年制度を適正に適用したにすぎない。被告としては、定年に達した従業員につき、その勤務成績を考慮して、さらに雇用関係を一年延長するかどうかを決定しているのであり、満五六歳をもって定年とするとの慣行があるわけではない。

2  街頭宣伝活動を理由とする自宅待機処分等について

原告らのうちの一一名は、原告組合の指示に基づき、被告の時季変更権を無視し、被告に圧力をかけるため、平成四年六月一九日、有給休暇と称して一斉に休業し、被告の正常な業務を阻害した上、吹田警察署に対する抗議行動を行ったのであるが、警察署に対する抗議行動ということからも、原告らの右行動の争議行為としての正当性にも疑問があるし、そもそも、右一斉休暇戦術は、被告の業務を阻害するストライキである。被告としては、これらの事情を考慮して、ノーワーク・ノーペイの原則に従い、右賃金カットを行ったのであるから、何らの違法はない。

3  原告松木に対する不当労働行為の主張について

(一) 被告は、原告松木に対し、平成三年六月一六日から同年九月五日まで、南営業所整備課の整備業務に従事するよう業務命令を発した。原告松木は、観光先での下品な言葉や異常に着飾ったり、旅館やドライブインの従業員等に対する下品な発言があり、原告松木に対する苦情が絶えず、原告松木を寄越さないで欲しいとの申出が何回となくなされた。そこで、被告は、原告松木に対し、注意をしたにもかかわらず、改めようとしなかったため、被告の信用にもかかわることから、やむを得ず右業務命令を発したもので、何ら不当なものでない。このことは、原告松木が観光バス業務に復帰するとき、被告に念書を差し入れたことからも明らかであり、このような理由に基づいて右業務命令を発したことは、原告松木に対してはもとより、原告組合との団体交渉においても、説明してきたところである。

(二) また、被告は、平成四年一〇月九日、原告松木に対し、前記のとおり、同年五月四日の出庫点呼の際運行管理代務者三日月誠(以下「三日月」という。)に暴行を加え、負傷させたこと及び同月二八日に入庫点呼を理由なく拒否したことに基づき、出勤停止処分に付したが、被告は、この処分を行うに当たって、三日月の事件に対する捜査の趨勢を見守ったり、企業秩序維持の見地から必要最小限度の処分に止めるなど、懲戒権の行使に当たり、慎重を期しているのである。さらに、原告松木は、平成二年八月に、被告の顧客を奪い、自ら観光バス業務を営んで手数料を徴収するという就業規則違反行為により、七日間の出勤停止処分に処せられていることをも考えると、右処分が正当であることは明らかである。

4  消滅時効

(一)(1) 原告らは、街頭宣伝活動を理由とする自宅待機処分に基づく賃金カットにつき、平成六年九月三〇日、不法行為による損害賠償請求を行い、平成八年五月一日付け準備書面(裁判所受理日は同年四月一五日)で、右請求が労働契約に基づく未払賃金請求でもある旨主張している。

(2) しかしながら、被告における賃金支払いは、毎月二〇日締め、二四日払いであるから、仮に、右賃金カット相当額を不法行為による損害として請求するのであれば、右賃金カットの対象期間が平成二年九月二〇日までの分は同月二五日(同月については二五日が支払日であった。)に、同月二一日から同年一〇月二日までの分は同月二四日に、それぞれ原告らが損害及び加害者を知ったというべきである。したがって、同日から三年を経過した平成五年九月二五日あるいは同年一〇月二四日の経過により、右損害賠償請求権につき、消滅時効が完成したことになる。

(3) また、原告らの請求が労働契約に基づく未払賃金請求であったとしても、原告らの賃金債権は、右支払日から二年を経過した平成四年九月二五日、あるいは同年一〇月二四日の経過により、消滅時効が完成したことになる。そして、原告らが本件訴えを提起したのが平成五年六月三〇日なのであるから、仮に本件訴えが原告らの未払賃金請求を含むものであったとしても、既に消滅時効が完成している。

(二)(1) 原告らは、平成四年六月二四日の賃金カットにつき、平成六年九月三〇日、不法行為による損害賠償請求を行い、前記平成八年五月一日付け準備書面で、右請求が労働契約に基づく未払賃金請求でもある旨主張している。

(2) しかしながら、右賃金カット分を未払賃金として請求するとしても、原告らの賃金債権は、右支払日から二年を経過した平成六年六月二四日の経過により、消滅時効が完成した。

(三) 被告は、さらに、次の各債権の消滅時効を予備的に主張する。

(1) 原告組合の損害賠償請求のうち、本件訴え提起の日である平成五年六月三〇日の時点で既に三年を経過した分については、原告組合が不法行為による損害の発生を知ったときから三年が経過し、消滅時効が完成している。

そして、これに該当するのは、昭和六三年一二月八日から平成二年六月二一日までに生じた弁護士延二二五人に対して支給したとされる二二五万円、組合員延六一八人に対して支給したとされる六一八万円及び実費一九〇万一四六〇円である。

(2) 原告らの手当差額、寸志、紹介料差額、一時金差額及び昇給差額については、平成六年九月三〇日に右各金額相当額が不法行為に基づく損害賠償請求がなされたものであるが、右手当差額、寸志、紹介料差額及び一時金差額については、同日既に損害の発生から三年を経過している平成三年九月二九日までの分並びに昇給差額(同年四月の昇給差額である。)については、消滅時効が完成したというべきである。

(3) 原告らの慰藉料の請求根拠は、平成二年三月一六日付け業務内容変更命令及び右命令後も継続している業務内容差別、平成二年から平成五年までの夏季、冬季一時金差別、前記街頭宣伝活動に関する自宅待機処分に基づく賃金カット(平成二年九、一〇月)、平成三年四月の昇給差別及び平成四年六月二四日の賃金カットである。そして、その金額につき、平成二年三月以降一か月当たり五万円として計算しているが、右街頭宣伝活動を理由とする自宅待機処分に基づく賃金カット及び平成三年四月の昇給差別については、前記平成六年九月三〇日(請求の趣旨拡張の申立てがなされた日)から三年以前に発生していたことであるから、これに対応する慰藉料については消滅時効が完成したというべきであるし、また、平成二年三月一六日付け業務内容変更命令及び右命令後も継続している業務内容差別及び平成二年から平成五年までの夏季、冬季一時金差別を原因とする慰藉料請求についても、右平成六年九月三〇日から三年以前に生じた事実に対応する分については、消滅時効が完成している(なお、各原告について、消滅時効の対象となった債権の詳細は、別紙(一五)記載のとおりである。)。

なお、原告組合の慰藉料請求についても同旨である。

(4) 被告は、平成八年五月一日の本件口頭弁論期日において、右(1)ないし(3)記載の消滅時効を援用した。

(5) なお、原告らは、前記街頭宣伝活動に関する自宅待機処分に基づく賃金カット及び平成四年六月二四日の賃金カットに関して、同額の付加金の支払命令を求めているが、右付加金は、損害賠償請求を前提に支払いを求めることは許されないし、また、未払賃金請求を前提にしても、既に二年の除斥期間が経過しているのであるから、原告らの右付加金の支払請求は、いずれにしても失当である。

四  被告の主張に対する認否

1  被告の主張1ないし3は争う。

確かに、被告の就業規則三七条一項には、「業務の都合により必要のある場合は、従業員に異動(配置転換、転勤、出向)を命じ又は担当業務以外の業務につかせることがある」との規定があるが、原告松木が南営業所の整備課の手伝いを命じられた当時、整備課の人員が不足していたなどの事情はなく、原告松木に整備課での勤務を命じる必要性は全くなかったし、被告においては、観光バスの運転業務と整備の業務とは人員において区別されていた上、採用も別個に行われていたのであって、観光バスの運転手から整備業務への配置転換が行われた例はない。さらに、被告では、年功を積むごとにバス運転手の地位が向上していくものとされており、原告松木のように、二〇年以上の経験を積んだ観光バス運転手が整備課の手伝いをすることなど慣行上あり得ない上、原告松木は、自動車整備の資格を有していないことを考えると、被告の右命令は、合理性を欠き、違法、無効であるというべきであるし、前記経緯や山田常務が原告松木に対し、「君を泊まりに出したら社長に怒られるから。」などと告げたことに照らせば、原告松木に対する右命令は、原告組合を嫌悪した被告の不当労働行為であることは明らかである。

2  消滅時効について

(一) 被告の消滅時効の主張は争う。

(二) 被告の全原告に対する不法行為は、原告組合の破壊を目的とし、平成元年一二月に原告組合が自交総連への加盟以降現在に至るまで継続してなされているものであることを考えると、全原告は、右不法行為により、包括して一個の損害を被ったというべきである。そして、被告は、現在も、全原告に対し、不法行為を継続して行っているのであるから、消滅時効は進行しないと解すべきである。

(三) 被告は、原告組合の組合員と他の従業員とを差別し続けながら、本件訴訟においても、賃金台帳等の資料を提出しなかったため、右差別の実態を解明するには、綿密な調査をせざるを得なかった。全原告において、その詳細を把握できたのは、平成六年九月三〇日の請求の趣旨拡張申立ての直前であり、そのときはじめて被告の不法行為の内容や各原告が被った損害が分かったのであるから、仮に消滅時効が進行するとしても、全原告が「損害及び加害者」を知ったのは、右申立ての直前であり、消滅時効は完成していない。

(四) 原告らは、前記のとおり、寸志、紹介料の差額相当の損害金につき、予備的に債務不履行に基づく損害賠償を求めているが、その消滅時効は一〇年であるから、少なくとも右損害賠償請求に関しては、消滅時効の主張は失当である。

五  原告らの反論

1  被告は、前記のとおり、原告らを差別し、不法行為を継続しているが、被告自身このような違法行為を続けながら、本件において、消滅時効を主張することは、信義に反し許されない。

2  仮に、被告主張のように、消滅時効が進行するとしても、全原告は、平成五年六月三〇日に本件訴えを提起したから、時効は中断したというべきである。

3  また、全原告は、本件訴状において、本件不法行為をすべて主張した上で、その損害の一部の賠償を求めているのであるから、右訴状における請求は一部請求というべきである。そして、全原告は、右請求が一部請求である旨を明示していないから、時効中断の効力は、右請求にかかる請求権のみならず、これと同一性を有する債権の全体に及ぶというべきである。したがって、原告らが前記請求の趣旨拡張申立書で新たに請求した平成二年九月分の自宅待機処分に基づく賃金カット、各種手当差額、寸志、紹介料差額、昇給差額にかかる請求についても、本件訴えの提起により、時効中断の効力が生じたというべきである。

六  原告らの反論に対する認否

原告らの反論の主張は争う。

第三  証拠

本件記録中の証拠関係目録記載のとおりであるから、これを引用する。

理由

第一  前記当事者間に争いのない事実に証拠(甲三ないし二四、二六ないし三六、三八ないし四〇、四二ないし四九、五二ないし六七、六九、七一、七二、七三の1・2、七四、七五、七六の1ないし9、七七、七八の1・2、七九、八一、八二の1・2、八三、八六の1ないし3、八七、八八の1ないし4、八九の1ないし18、九〇の1ないし18、九一、九二の各1・2、九三、九四の1ないし8、九五の1ないし7、九六の1ないし8、九七ないし一〇九、一一二、一一三、一一八、一二一ないし一二四、一二六ないし一三三、一三四の1・2、一三六の1・2、一三七ないし一四二、一四三の1・2、一四四ないし一六五、一六六の1ないし13、一六七の1ないし3、一七一ないし一七九、一八〇の1・2、一八二ないし一八五、一八八、二〇一、二〇二の1ないし3、二〇三の1ないし12、二〇四の1ないし12、二〇五ないし二〇八、二一〇の1・2、二一一、二一二、二一四、二一六、乙二三の1ないし5、三四の1ないし3、三五ないし三七、三八の1ないし3、三九、五三、五四の2の1ないし3、五四の3、五四の4の1ないし3、五四の5の1ないし4、五四の6の1ないし3、五四の7の1・2、五四の8・9、五四の10、11の各1、2、五四の12の1ないし4、五四の13・14、五四の18ないし21、七三、七四の各1ないし6、七五の1ないし3、検乙一ないし四、証人奥田、原告松木、同松下)及び弁論の全趣旨を総合すると、次の事実を認めることができる。

一  当事者等

被告は、住所地に本店を置き、一般貸切観光バス、旅行斡旋等を業とする会社である。

原告組合は、被告の従業員で組織された労働組合であり、原告らは、原告組合の組合員であり、被告に雇用されている。

二  原告組合の結成等

1  被告には、従業員で組織された豊友会と称する親睦団体があった。豊友会は、昭和六三年三月、被告との交渉権を確立するために解散して、原告組合が結成された(当時の名称は、東豊観光労働組合)。原告組合には、豊友会の構成員のうち、課長以上の管理職などを除いた四二名の従業員が加入した。原告組合の結成当時、山田社長は、被告くらいの規模の会社であれば労働組合があってもよいのではないかと述べるなど、特に原告組合に対して拒否的な反応を示すことはなかった。

原告組合結成後、原告組合と被告とは、定年延長やスノータイヤの装着、入庫時のバスの清掃等の問題について、団体交渉を行ってきたが、改善に至らなかった。また、被告は、タイムレコーダーの記載不備に基づく始末書の提出を求めるなど、従業員に対する管理が徐々に厳しくなってきたことから、原告組合の組合員の間には、被告に対する不満が高まった。右のような経過を経て、原告組合と被告との関係は、次第に悪化し、平成元年一二月初めころには、山田社長が従業員を前にした社長訓示において、共産党系の組合に入ることは会社にとってダメージであり、マイナスであると述べるようになった。

2  原告組合は、平成元年一二月二六日の定期大会において、自交総連を上部団体として、これに加盟することを決定し、平成二年一月一二日、自交総連に加盟し、その名称を現在の名称に変更した。右自交総連への加盟の決定に当たって、原告組合の結成当時の委員長であった池亀ら組合員一〇名は、同月五日、自交総連とは考え方が違うとして、組合脱退届けを提出した。

3  平成二年一月八日、被告の北営業所及び南営業所の業務用掲示板に、職組の結成発起人会開催の通知書(甲二七)が掲示された。右結成発起人として、池亀ら右一〇名及び被告の伊勢田ら三名の課長代理の合計一三名が名前を連ねていた。右通知書には、「共産党の衰退は世界的な傾向であり、………そうした環境の中において何故、東豊観光労組が自交総連(共産系)に加入しなければならないのか、全く理解に苦しむものであります。ここにおいて我々良識ある職員が立ち上がらなければ、組合全体が、自交総連に走ったと誤解されます。そうなれば有形、無形で社会的な制裁を受けることは当然で有り、特に営業面における会社の損失は、莫大なものと推察されます。………自交総連に加入する東豊観光労組の組合員はその一部であることをここに明確に社会及び関連会社に衆知、徹底させねばなりません。………」と職組結成の趣旨が記載されていた。

三  原告組合に対する被告の対応

1  原告組合は、平成二年一月一二日、被告に対し、自交総連に加盟したことを通知(甲二六)するとともに、爾後の労使関係や定年を控えた原告組合の執行委員である原告坂の定年問題についての団体交渉を申し入れた(甲三六)。他方、伊勢田は、同日、被告の南営業所の社長室に原告組合の組合員数名を呼び入れ、原告組合からの脱退を求めた。

被告は、同月一三日、原告坂に対し、原告坂が同月一日に被告の就業規則一四条により定年に達した旨通知(甲六九)した。同就業規則には、定年は五五歳とする旨(一四条)及び従業員が定年に達したときは、被告は、三〇日前に予告するか三〇日分の平均賃金を支給して当該従業員を解雇する旨(一三条)規定されていた。

2  山田社長の実弟の山田常務は、平成二年一月一四日、同年二月一〇日に満五五歳となる山本に対し、原告組合の組合員であり続けるならば、二月一〇日の誕生日で辞めてもらう旨電話で申し渡した。さらに、山田社長も、同年一月一六日、山本に対し、山本は二月一一日に定年となるが、自交総連の組合員であり続けるならば、同日で退社してもらう旨告げた。これに対し、山本は、原告組合を脱退するとの意思を表明し、山田社長は、山本に対する定年通知を破り捨てて撤回した。また、職組の組合員である田中光喜(以下「田中」という。)は、同年一月六日に定年を迎えたにもかかわらず、引き続き正社員として被告に勤務していた。

原告坂は、同年三月二九日、右定年解雇につき、大阪地方裁判所に地位保全の仮処分(当庁平成二年(ヨ)第七一五号事件)を申請した。その後、被告は、田中及び山本の地位を正社員から嘱託社員に変更した。

なお、被告においては、それまでの間に満五五歳となった従業員は、原告坂、山本及び田中以外に六名いたが、うち五名は停年後の一年間正社員として勤務し、他の一名も定年後嘱託社員として勤めていた。

3  被告は、平成二年一月二六日以降八回にわたって、山田社長名で社告を出した。

同日付けの社告(1)(甲二九)には、「昨日近畿運輸局より召喚を受け出頭したところ、東豊労組及びその上部団体からの抗議(暴露)により下記の事項につき説明を求められ運輸局の調査が行われることを通達された。………特に自交総連系の労組員は道交法運送法は勿論、軽犯罪法に至るまで特に注意して対処し厳重処分の対象にならないよう注意して頂きたい」、「自からの行為のみが正しく、企業のそれはすべて誤りであるというワンパターンの発想が二一世紀まで持続できるか否か、………将来に向って取り返しのつかない烙印を押され、老いて路頭に迷うことがないよう熟慮の上行動されることを希望します。」との記載があった。

同月一四日付け社告(2)(甲三〇)には、団体交渉の条件として上部団体である自交総連を「当社敷地内に入れることを禁止する。」と記載されていた。

さらに、同月一五日付け社告(3)(甲三一)には、「東豊観光労組が共産系上部団体自交総連に加入したというニュースが社外関係先にもほぼ知れわたり、営業サイドにおいてその影響が出始めている。………複数のエージェント及び一般客の中から、過去に自交総連その他共産系組合が強い同業他社から受けた被害が忘れられず、当社自交総連系労組員が乗務するバスの配車を拒否する要請行動を受けた。………労組員自体にも過激な行動を批判し脱落者が輩出して混乱してるようであるので、近い将来会社側も協力して善処する旨を説明して理解を求めているが納得を得られず、取り敢えず斗う労組と、協力する労組の寫真入り名簿を提出することによって従来の関係を維持することになった。………このような東豊労組の時代の流れを無視した旧態依然たる行動に幻滅を感んじ労組を脱退した従業員に対して、企業の存続、繁栄に協力し、その環境の中で労働者の権利を主張する健全なる全東豊職組は彼等を暖く迎え入れ社業の回復を計ることを希望する。」との内容が記載されていた。

同年三月一日付けの社告(4)(甲三二)には、「当社は能力主義による勤務評定を実施しているので、自交総連労組員は余程の貢献度、功績が無ければ平均点を上廻ることは難しい。」、「業者からの指名のある乗務であっても会社側としては、信頼のできない人達の乗務を命ずることはできない。」と記載されていた。

同年五月二三日に出された「東豊観光労組従業員に告ぐ」と題する社告(6)(甲三四)には、「今現在、会社がとっている行動は決して組合潰し等を目的とした次元の低いものではなく、業界の模範となるような健全且つ理想的な労使関係を作り出す生みの苦しみを伴った将来の発展と安定をもたらす大切な手段である。過ちに気付いた人があったとすれば、過ちに気付くのが他の人よりわずか半年遅れただけのことである。これの解決に一五年の歳月がかかるとすればわずかな遅れであり、容易に取り返すことのできることである。」と記載されていた。

4  被告は、平成二年二月一日、原告坂に対し、同月一二日をもって前記就業規則一三条に該当する旨通知した(甲七一)。

5  山田社長は、平成二年二月一九日、原告組合の組合員であった郡司に対し、給与の査定を理由に原告組合の組合員名簿を提出するよう求めるとともに、自交総連の組合員はとことん食えないようにしてやるなどと述べ、同年三月一〇日にも、原告組合を脱退後労働組合に加入していなかった従業員一一名に対し、中立であり続けると原告組合のメンバーと同じように差別する、態度を明確にするように、三月二〇日までに返事を求める、また、なぜ中立でいるのか理由を書くようになどと述べたところ、これら一一名の従業員は、いずれも職組に加入した。

また、そのころ、原告組合の書記長であった河内が原告組合を脱退して職組に加入したが、このことについて、原告伊東が、職組の運営委員長の前川に対し、原告組合の役員であった者の加入は認めない方針ではなかったのかなどと問い質したのに対し、前川は、社長が入れるんでしゃあないなどと答えた。

6  被告における自動車運転業務に従事する従業員(乗務員)の業務を大別すると、行楽客を観光地に運送し、案内する観光業務及び工場や団地等への定期的送迎や冠婚葬祭等不定期の送迎を行う業務(送迎業務)がある。被告においては、観光業務の経験のない者が入社した場合、まずライトバンによる特定顧客専属の定期の送迎業務に一ないし二年従事した後、不定期の送迎業務に従事しながら週末には観光業務に従事する観光バスの見習業務を経た上で、最終的に入社後三年程で、観光業務を主体とする業務に従事するという体制が採られている。

そして、乗務員は、特定の車両を割り当てられ、これを自分の担当車両として乗務している。この車両の割当ては、乗務員の年功に応じてその順に、主に観光業務従事のための中型サロンカー、小型サロンカー、中型スタンダードカー、小型スタンダードカー、専ら送迎業務従事のための小型送迎専用車、専属送迎業務従事のためのライトバンがそれぞれ割り当てられていた。どのような車両が割り当てられるかによって、乗務員の業務や配車の内容が限定され、運転者の収入や位置付けが異なることとなり、通常は、前記の順に乗務員の収入及び位置付けが高くなるものとされている。

7  被告は、平成二年三月一七日、原告組合の組合員に対し、本件担当車両変更を行った。その結果、これらの者の担当車両は、おおむねこれまでの観光業務用の中型、小型のサロンカーから送迎業務用の小型送迎専用車に変更され、その業務内容も、観光業務から送迎業務へと変更された。被告は、同年一一月六日以降、原告組合の組合員の担当車両を従前のものに戻し、観光業務にも従事させるようになったが、後記のとおり、業務内容において他の従業員との間に差が依然として存在する(なお、担当車両の変更を命じられた者のうち、郡司は、その後原告組合を脱退した。)。

さらに、被告は、同年三月二九日、原告奥田に対し、同年四月二日から神戸港埠頭公社でのライトバンによる送迎業務への従事を命ずる配置転換命令(以下「本件配転命令」という。)を発した(甲六六)。原告奥田は、これを拒否した(甲六五)ところ、被告は、原告奥田に対し、北営業所から南営業所へ勤務場所を変更し、整備課の手伝いを命ずるとともに、同年五月一六日、本件配転命令の拒否を理由として、三日間の出勤停止及び基本給の二五分の三を減じる懲戒処分をした(甲六七)。山田常務は、本件配転命令に先立って、原告奥田に対し、「君は自交総連の組合員であるからもう一遍神戸へ行け。」などと述べていた。被告は、原告組合の抗議により、同月二〇日ころ、原告奥田を、北営業所の送迎業務に戻し、その後、原告奥田は、観光バス見習業務に従事するようになった。

なお、原告奥田は、高校卒業直後の昭和六〇年に被告に入社し、神戸港埠頭公社での専属送迎業務に従事した後、昭和六三年二月ころ、大型二種免許を取得し、平成元年九月から観光バス見習業務に従事していた。

また、職組の組合員のうち、被告に昭和六三年に入社した加藤某、平成元年に入社した田中宏幸や大橋某は、入社後一年足らずで観光バス業務に従事している。これらの者は、原告奥田より年長であるものの、これまで観光業務の経験は全くなかった。なお、原告水澤は、中型サロンカーに乗務していたが、本件担当車両変更直前に右車両は廃車となった。原告水澤には、その後担当車両が与えられなかったが、同年三月一七日までは、観光バス業務に従事していた。また、原告松村昭男、同松村高喜、同佐藤利之(以下「原告佐藤」という。)及び上野は、いずれも、観光バス業務に従事していたが、被告は、同日から一一月五日までの間、担当車両の変更はしなかったものの、これらの者を観光業務に従事させなかった。そして、上野は、その後被告を退社した。

8  被告の三浦人事課長は、南営業所三階の待機室で行われた新規採用予定者の面接において、「東豊職組に入るということで承諾を得ている。そのことを採用の条件にしている。」などと述べ、実際、平成二年以降の新規採用者で原告組合に加入した者はいなかった。

9  原告組合は、平成二年五月二八日、大阪府地方労働委員会に対し、原告坂に対する定年退職の取扱いや担当車両変更、本件配転命令等が不当労働行為に当たるとして救済申立てを行ったが、その後もさらに、被告を被申立人として、数件の救済申立てをした。

10  大阪地方裁判所は、平成二年六月二八日、前記原告坂の仮処分申請について、平成二年一二月三一日まで原告坂が被告の従業員たる地位にあることを仮に定めるとともに、被告に対し、未払賃金一一八万一九七九円及び同年六月二一日から同年一二月三一日(ただし、それ以前に第一審の本案判決の言渡しがなされた場合にはその日)までの賃金の仮払いを命ずる決定をした(甲一五八)。当初、被告は、右決定に従わなかったため、強制執行されたこともあった。しかし、被告は、同年一一月六日、同年二月一二日に遡って原告坂に対する解雇処分を撤回し、同年一二月三一日までは正社員として、平成三年一月一日から同年一二月三一日までは嘱託社員とする旨の命令を発する(乙五四の2の1・2)とともに、平成二年一二月二〇日、原告坂に対し、同年の夏季一時金及び同年四月以降のベースアップ分として、原告組合の組合員の平均昇給額に相当する金額を支払った(乙五四の4の1)。

11  被告は、同年六月二三日、取引先の旅行代理店に対し、山田社長名で、「闘う姿勢を崩さず、会社に反発する従業員を会社の代表として、バスに乗車せしめ、皆様のご用命にお応えすることはできません。現在は宿泊を伴う観光業務を命じておりません。」との内容の通知をするとともに、「協力する従業員」(原告組合の組合員以外の者)と「斗う従業員」(原告組合の組合員)とを区別した上でそれぞれの名前を示し、乗務員の希望についてのアンケート調査を行った(甲八一)。

12  被告は、同年一一月六日、前記同年三月一七日の担当車両の変更について、原告水澤以外の原告組合の組合員につき、右変更前の状態に戻した。原告水澤については、同日付けで中型サロンカーが与えられたが、同月末この車両は廃車となり、その後担当車両は割り当てられていないし、原告佐藤も、従前担当していた観光業務用バスが同年一二月一日に廃車となった後は、これに替わる車両の割当てがない。

なお、被告においては、担当車両が廃車となった場合には、これと同程度以上の新車が割り当てられるのが慣行であった。

13  平成三年一月一二日から同月二〇日までの被告の南営業所における配車状況について、同営業所に所属する原告組合の組合員六名(原告中田、同水澤、同坂、同谷口、同松下及び上野)と原告組合の組合員以外の乗務員二〇名とを比較すると、観光業務従事日数は、原告組合の組合員が一人平均約3.16日であるのに対し、他の従業員は3.85日であり、また、送迎業務従事日数は、原告組合の組合員が一人平均約4.16日であるのに対し、他の従業員は2.1日であった。さらに、宿泊を伴う観光業務への従事状況は、原告組合の組合員が延べ七人であるのに対し、他の従業員は延べ二五人であった。そして、この二五人のうちの一一人の行先は、山中温泉、山代温泉や片山津温泉等比較的寸志、紹介料が多いとみられる観光地であるのに対し、原告組合の組合員には、このような観光地が行先となっている者はいなかった。

また、同年六月二二日(土曜日)、二三日(日曜日)、同月二九日(土曜日)、三〇日(日曜日)の被告の南営業所における配車状況は、同営業所に所属する原告組合の組合員六名のうち宿泊を伴う観光業務に従事したのが一人であるのに対し、他の従業員二〇名については、延べ三三人が従事していた。また、原告組合の組合員が観光業務に従事し、宿泊した回数を、平成元年一月から同年五月までの合計と平成三年の同じ期間の合計で比較すると、原告奥田を除き、増加している者はいない(原告奥田については、前記のとおり、送迎業務に従事した後、平成元年九月から観光バス見習業務に就いていたため、同年一月から同年五月までの間における宿泊は二泊であり、また、平成三年一月一日から同年五月までの間における宿泊は一八泊で、一六泊増加している。)。

14  被告における乗務員の手当てについては、走行一キロメートル当たり二円の走行手当て、宿泊一泊につき一〇〇〇円の宿泊手当て及び残業手当てがあり、送迎業務と観光業務を比較すると、観光業務に従事する方が、通常宿泊を伴い、走行距離も長く、残業も多くなるため、賃金収入は高くなる。

原告らが支給を受けた平成元年から平成五年までの各種手当ての額は、別紙(三)年度別差額金額一覧表記載のとおりであり、平成元年に比べて、平成二年は大幅に減少した。

15  被告の乗務員が観光業務に従事した場合には、通常一泊二日の観光で五〇〇〇円以上、日帰りの観光で二〇〇〇ないし三〇〇〇円の寸志を乗客から受け取っていた。寸志は、本来乗客が乗務員に直接心付けとして渡すものであるが、旅行代理店が観光に要する実費として計上し、観光料金に含めることが通例となっており、また、被告が旅行代理店や顧客に対し、自ら請求したり、立て替えたりして、乗務員に支払うこともあった。さらに、乗務員は、立ち寄ったドライブインや土産物店から紹介料を受け取ることが多く、これらの紹介料は、来店毎に一定額が支払われたり、来店した観光客の人数に応じた額が支払われたりするなど、それぞれの店によって異なる。原告らが平成二年三月一六日以前及び平成三年度に支払いを受けた寸志、紹介料は、別紙(八)寸志、紹介料損害金計算表記載のとおりである(A、Bは、いずれも一か月の平均額)。

16  原告伊東は、昭和四九年二月に被告に入社し、昭和五一年から観光バス業務に従事していたが、昭和五四年四月から一年余りの期間再び専属運送業務に従事した後、観光バス業務に戻った。原告伊東は、その後さらに被告から送迎業務に就くよう命じられたのに対し、送迎業務は寸志や紹介料等月一〇万円の収入減になるとの理由で、この命令を拒否したところ、山田社長が何とか配慮するから自分に任せるよう告げたので、原告伊東は、右命令に従い専属運送業務に従事した。そして、原告伊東は、被告から、この従事期間中毎月五万円の補填を受けた。また、原告松本は、昭和五九年に被告に入社したが、その面接に際し、被告の担当者から「観光バス業務に従事するようになると、寸志、紹介料があるので、それまで我慢すれば、生活も安定する。」などと聞かされたし、被告は、平成二年二月一日号の求人誌に、「給料は全額家庭に」、「小遣いはチップでOK」と記載した求人広告を掲載した(甲七九)。

四  団体交渉における被告の対応

1  原告組合は、平成二年一月一二日、前記のとおり、被告に対して自交総連に加盟したことを通知するとともに、今後の労使関係及び原告坂の定年問題についての団体交渉を申し入れた。これに対し、被告は、同月一三日、原告組合に対し、団体交渉の申入れは遅くとも二週間前には行うこと及び団体交渉の会場にビデオカメラを持ち込むことを要求した(甲三五)。

2  山田社長は、平成二年二月一四日、原告組合との団体交渉の席上、「会社にとって闘う組合員は必要ではない。自交総連の組合員は会社に貢献しない。今までの職場の既得権は一切認めない。」などと発言した。また、被告は、同年四月二日の団体交渉申入れに対し、同日、同申入書に、「団体交渉は去る三月二七日、多数派組合との間で終了しておりますので一握りの少数派組合と再度交渉する意思がありません」と記載して回答した(甲四二)。さらに、被告は、同月三日及び五日の団体交渉申入れに対し、奥田部長名で、「社長の健康上の理由からお申出には応じられません。」、「社長の出席なしの交渉ではミノ有る交渉が出来かねると思います。」と回答し、拒否した(甲四三、四四)。被告は、同年五月六日、原告組合の団体交渉申入れに対し、「協力する組合(多数の組合)との話し合いの前に、たたかう組合(少数の組合)との交渉が出来ないのは当然である。」と記載した書面(甲五三)で、これを拒否し、また、同月二三日の団体交渉において、交渉の時間を一時間と制限した上で、山田社長は、「差別はしていない。闘う組合員であるから当然の結果である。」などと述べた。その後、同月二四日の団体交渉申入れに対し、被告が本年度の団体交渉は終了した旨回答した(甲五八)のに対し、原告組合は、同月二六日午前五時から抗議のため二四時間のストライキを実施した(甲五九)が、被告は、以後同年九月まで、原告組合の再三の団体交渉の申入れにもかかわらず、同様の理由でこれに応じることを拒絶した。

3  同年一〇月一六日、原告組合と被告とは団体交渉を行うこととなったが、山田社長は右団体交渉には臨まず、被告側の担当者として、奥田部長及び田渕一己南営業所長(以下「田渕所長」という。)が出席した。山田社長は、その後も団体交渉に出ず、専ら奥田部長及び田渕所長が出席した。奥田部長及び田渕所長は、団体交渉の席上、原告組合の要求を聞き、これを持ち帰って山田社長に報告し、その回答を得た上で次回の交渉に臨み、これを原告組合に伝えることを繰り返していたため、さしたる成果は上がらなかった。

4  同月三〇日の団体交渉の席上、被告は、原告組合に対し、被告は原告組合の労働三権及び正当な組合活動を尊重保障し、原告組合は被告の経営権を尊重保障すること、労使間で生じている紛議につき互譲協力の精神に則り早急に話合いにより解決することを内容とする協定の締結を提案した(甲九〇の9)。これに対し、原告組合は、右提案について、抽象的な内容ではなく、具体的な取決めを含めて合意すべきである旨主張した。さらに、被告は、同年一一月五日、原告組合に対し、被告は、原告組合からの申入日から一週間以内に団体交渉に応じること、団体交渉の時間は二時間程度とすること、団体交渉のメンバーは労使とも六名以内とし、交渉権限を有する者が出席すること、団体交渉の会場は原則としてサニーストンホテルとすること、団体交渉のその余のルールは双方で協議して決定することを内容とする団体交渉のルールの定立を提案した(甲九一の1・2)。

しかしながら、原告組合が同月一六日の団体交渉申入れに際して、山田社長の出席を求めたのに対し、被告は、同月一八日、団交権を奥田部長及び田渕所長に委譲していることを理由にこれを拒否した。

5  原告組合は、後記のとおり、平成二年度の夏季一時金及び平成三年度の定期昇給につき、原告組合の組合員が他の従業員に比べて不利益な取扱いを受けたため、団体交渉の際に、被告に対し、これらの点に関する資料の提出を求めたが、被告はこれに応じなかったばかりでなく、何らの説明も行わなかった。

五  街頭宣伝活動を理由とする自宅待機処分

1  原告組合は、本件担当車両変更等により、組合員が不利益を被り、経済的にも困窮したことなどに対処するため、平成二年八月初めから宣伝カーを利用して、被告の南営業所の前で午前九時三〇分ころから労使間の問題解決を呼びかけたり、被告の登記簿上の本店所在地でもある大阪府堺市大美野の山田社長の自宅周辺で、録音テープを使用するなどして別紙(四)街頭宣伝活動一覧表処分の理由となった街頭宣伝活動を行った日欄記載の日に街頭宣伝活動を行った。

原告松下は、同月一三日、年次有給休暇を申請して街頭宣伝活動を行ったが、奥田部長は、提出された休暇届は認めないとして、これを原告松下に返却した。なお、被告の休暇届用紙(甲七七)の末尾には、注として、「この休暇の許可に際して労働運動、争議行為等、会社に不利益をもたらす行為を行う場合は、休暇許可を取り消す。」との記載があったし、田渕所長も、有給休暇を取得するときは、事前に常務の了解を得るよう求めていた(甲六三)。そして、被告は、年休が取り消され、同日は無断欠勤になるとして、原告松下の同月支給分の給与から、精勤手当てを含め、五万〇一〇〇円を減額した。これに対し、原告松下は、同月三一日、奥田部長に対し、右賃金カットは不当であるとして、減額分の支払いを要求し、同年九月には、阿倍野労働基準監督署にも、その旨申し立てた。

被告は、同月一日、原告松下に対し、前記街頭宣伝活動が就業規則に違反するとして、同月三日から一〇日までの七日間の自宅待機処分とし(甲九六の1)、その間被告からの電話による点呼に応じない場合は欠勤扱いにするとともに、被告が貸し与えた書物を熟読し、その成果を原稿用紙三枚にまとめて提出するよう命じた。原告松下が、同月三日、出勤し、被告の南営業所三階の乗務員待機所で待機していたところ、被告は、原告松下の自宅に電話をかけて点呼を行い、不在であったことを理由に欠勤扱いとし、七日間の賃金を減額した。また、前記自宅待機期間中の同月四日及び五日の二日間について、原告松下が年次有給休暇を取得したため、被告は、当初の処分期間を二日間延長し、同月一二日までとした。

被告は、さらに、同年八月中に行われた原告組合による街頭宣伝活動に関し、原告組合の別紙(四)街頭宣伝活動一覧表組合員名欄記載の原告らを含む組合員に対し、原告松下と同様の処分を行った(甲九六の2ないし6)。その詳細は、同一覧表記載のとおりであり、それによる賃金カット額は別紙(五)街頭宣伝賃金カット額一覧表記載のとおりである。

2  被告は、同年九月二五日、原告松村高喜に対し、同年八月二七日に年次有給休暇を取得して街頭宣伝活動を行ったことを理由に、同日の有給休暇を取り消して欠勤扱いとし、九月支給分の給与から、精勤手当てを含め、五万〇六五四円を減額した。

3  被告は、同月二五日、前記原告松下及び原告松村高喜に対し、各減額分を、それぞれの預金口座に振り込んで支払ったが、その際、「行政の勧告による仮払金」と記載した書面(甲一一三)を交付した。

六  原告組合の組合旗及び備品の撤去

1  原告組合は、被告の南営業所三階のベランダに組合旗を掲揚していたが、同営業所の三階は、原告組合の事務所、被告の乗務員の待機所及び名目上の社宅として利用されていた。また、原告組合は、被告の北営業所南西側付近の人通りの少ないところにも組合旗を掲揚していた。

2  被告は、平成二年五月三日、原告組合に対し、右南営業所及び北営業所の組合旗につき、施設管理権者である被告に無断で掲揚されたものであるとして、同日二一時までにその撤去を求めるとともに、これに応じない場合には、被告の手で撤去する旨通告した(甲九四の2)。これに対し、原告組合は、同月七日、被告に対し、原告組合の団結権が保障されていることとの関係で、被告には一定の受忍義務があるとして、組合旗の撤去を拒絶した(甲九四の3)。他方、同月一一日、原告組合が前記北営業所一階の整備課にあるテーブルの引出しに保管していた組合旗が紛失するという事件が発生した。

被告は、同年八月一八日、原告組合に対し、山田社長名で被告会社内で掲出している組合旗を早急に撤去することを求め、これに応じない場合には被告の手で撤去する旨通告し、同月二一日、南営業所に掲揚されていた組合旗を撤去し、前記乗務員の待機所に置かれていたが、原告組合は、直ちにこれを掲揚し直した。

原告組合と被告との間では、その後も平成三年一月に至るまで、組合旗を巡って、その撤去の通告や被告の実力行使、原告組合による掲揚のし直しなどの事態が繰り返された。なお、被告は、隣家から、「境界近くに掲揚されているので、自分の会社が争議中であるとの誤解を受けて困る。」などの抗議を受けたことがあった。

3  山田社長は、平成二年八月二七日、原告組合の事務所に入り、在室していた原告坂に対し、「これはうちのもんや。勝手に使うな。」などと言って、同行した従業員に命じて、エアコンの配線を切断させ、また、コンセントを潰させたため、組合事務所内でのエアコンの使用は不能となった。また、被告は、同日、右組合事務所に設置されたコピー機を、被告の所有物であるとして持ち出した。しかし、右コピー機は、平成元年一月に被告が原告組合に貸与した古いものであり、原告組合が六万円程を出費して修理のうえ、使用していたものであった。なお、当時、被告は、別のコピー機を使用していた。

奥田部長は、平成二年九月一日、原告組合に対し、組合事務所で使用されていたソファーについて、被告のものであることを理由に、返還するよう申し入れ、原告松下と口論となったが、結局、右ソファーは、事務所に入ってきた山田社長の指示で搬出された。なお、右ソファーは、被告がゴミとして処分しようとしていたのを、原告組合が貰い受けて使用していたものであった。

七  豊和会について

1  被告において、平成二年七月二〇日、被告の一般従業員及び嘱託社員を正会員、管理職を準会員、協力業者及び常勤役員等を賛助会員とする親睦団体である豊和会が結成された。豊和会の当初の会員数は六三名であり、奥田部長が会長となり(平成三年一月に退任)、他の六名の役員のうちの五名は、職組の組合員がなった。右豊和会の規約(甲九五の1)には、次のような定めがあった。

「第二条 本規約に於て、会員資格者である協力する従業員とは、会社の経営方針を理解し、経営方針に対して、言動共に協力する者と認められた従業員を言う。以下協力する従業員と言う。

第三条 本会は協力する従業員と会社との親睦を計り、会員の共済を主目的とし、貸付、旅行費用の負担、冠婚葬祭、クラブ活動等の活動により社業の発展に協力し以て会員の福祉を目的とする。

第五条 本会は協力する従業員と、課長以上の(嘱託者を含む)管理職以上と及び本会が認めた、協力者を以て会員資格とする。」

2  原告松村高喜は、豊和会の結成直後に、文書で入会の申込みを行ったが、豊和会は、右申込みを拒否する旨の回答を文書で行った。また、原告中田も、奥田部長に対し、電話で豊和会への入会を申し込んだが、同様に拒絶された。

3  豊和会は、同年八月八日から一〇日にかけて、被告が経営する釣宿で新入社員の会員の歓迎会を行った。右歓迎会には、三五名の会員が参加し、その自己負担額は各自四〇〇〇円であった。また、豊和会は、同年一二月に会員の香港旅行を実施した。この旅行では、一人当たり一二万円の経費を要したが、そのうち六万円を被告が負担し、豊和会からも三万三〇〇〇円が補助されたため、結局、会員個人の負担額は二万七〇〇〇円であった。

八  平成二年度以降平成五年度までの夏季、冬季一時金

1  被告が平成二年度以降平成五年度までの間に原告らに支給した夏季、冬季一時金の額は別紙(一三)一時金差額一覧表支給額欄記載のとおりであるが、そのほとんどが平成元年度に支給された夏季、冬季一時金の金額を下回るものであった。

2  被告は、昭和六二年の夏季一時金が前年より減額された際、その主な原因が設備投資であることや被告の売上げの状況等について説明し、従業員の理解を求めたりしていた。しかし、右平成二年度以降の夏季、冬季一時金の減額については、原告組合が団体交渉で資料の説明を求めたにもかかわらず、被告はこれに応じず、また、口頭の説明もしなかった。

原告組合が職組の組合員二六名を対象に平成二年の夏季一時金に関する調査を行ったところ、嘱託社員三名を含む二一名がこれに応じ、その全員が前年より支給額が増加した旨回答した(甲一〇一)。

3  なお、被告における一時金の査定は、従業員の所属する部署の管理職が、苦情、事故、遅刻、欠勤率、勤務態度等の項目につき、定められた採点基準に基づいて行っていたが、最終的には、山田社長と総務の担当者が決定していた。

九  平成三年度の定期昇給

1  奥田部長及び田渕は、平成三年四月一七日、同年度の定期昇給についての団体交渉に被告側の担当者として出席し、被告の赤字が確実であるが、昨年を下回らないよう努力している旨回答した。

職組は、同年五月一日、平成三年度の定期昇給について、被告の全従業員の平均を金額で一万五七九五円、率で固定給の5.92パーセントとするとの被告の回答があった旨の「全東豊職員組合ニュース」(甲一三四の1)を掲示した。同月二日の団体交渉において、被告は、原告組合に対して、職組に示したのと同様の回答をした。これに対し、原告組合は、非組合員及び管理職を含めた全従業員の昇給額を示さなければ実質的に5.92パーセントの昇給があったのかどうか分からないとして、被告に対し、全従業員の昇給額を明らかにするよう申し入れた。しかし、被告は、これに応じなかった。奥田部長は、同月一四日、原告組合の組合員についての昇給額を示したが、その内容は、別表(六)昇給差額一覧表実際昇給額欄記載のとおりであった。なお、原告坂は、嘱託社員であり、その定期昇給については、固定給に昇給率を乗じて得られた金額の半分を実支給額とする扱いであった。

2  同表記載のとおり、原告組合の組合員の平均昇給率は、5.31パーセントであるが、被告の前記回答のように、原告組合の組合員を含む全従業員(役員を除き、管理職を含む九〇名)の平均昇給率を5.92パーセント、平均昇給額を一万五七九五円とすると、原告組合の組合員を除いた従業員の平均昇給率は、6.01パーセントとなる。そこで、原告組合は、同月一七日に開催された団体交渉において、被告に対し、原告組合の組合員の昇給額が全従業員の平均にも及ばず、また、一万二〇〇〇円とされた者が多いことについて、査定の根拠や他の従業員の昇給額を明らかにするよう求めるとともに、このような取扱いは原告組合の組合員に対する差別である旨主張した。これに対し、奥田部長は、査定方法は点数制で個々の役員が行い、最終的には山田社長が決する旨及び査定額の範囲や資料は企業秘密であり、各個人の昇給額は企業秘密あるいはプライバシーの問題があるので示すことはできない旨回答した。そして、被告は、右提示した金額を認めるよう原告組合に申し入れたり、原告中田に対し、右金額を仮に認める旨記載した書面を提出するよう求めたりしたが、原告組合は、同月二八日、右書面の提出を拒否した。しかしながら、被告は、同年六月、原告組合の組合員に対し、被告が提示した前記昇給額を四月に遡って支給した。

3  被告における定期昇給の査定は、前年の三月二一日からその年の三月二〇日までの期間を対象とし、事故、苦情、遅刻、欠勤率、勤務態度等の査定項目について、従業員の所属する部の部長が点数を記入し、この査定を踏まえて、最終的には山田社長が決定している。

4  なお、被告における嘱託社員の定期昇給については、原告組合が結成される以前から、正社員の昇給率を決定した後、これを固定給に乗じて得た金額の半分とするのが通常であったが、査定により、この金額を上回ったり、下回ったりする者もいた。

一〇  原告松木に対する配転命令、自宅待機処分及び賃金カット

1  被告は、吹田市南金田所在の北営業所で観光バス運転手として勤務していた原告松木に対し、平成三年六月一六日以降、大阪市西成区所在の南営業所整備課の整備業務に従事することを命じる配転命令を発し、以後三か月にわたって、観光バスの乗務をほとんどさせず、レンタカーの洗車や回送業務に従事させた。

2  原告松木は、平成四年五月一四日朝、被告の北営業所二階の事務室において、出庫点呼の際、運転管理代務者三日月から運転免許証の提示を求められた。原告松木は、通常出庫点呼の際に運転免許証の提示を求められていなかったため持参しておらず、一旦取りに戻った後引き返し、革製ふたつ折りのケースを開いて、運転免許証を三日月の前に突き出して提示し、出庫点呼を終えたが、その際、三日月からの抗議等はなかったため、事務所を退出し、階下に降りようとした。

三日月は、原告松木に声をかけ、口が切れた旨告げたので、原告松木は、事務所に戻って確認したところ、三日月の口の辺からの出血は見当たらなかったが、念のため医者に行こうと言ったところ、三階から山田常務が降りてきて、会社で病院に連れていく旨述べたので、原告松木は、そのまま乗務に就いた。

3  三日月の負傷については、診察した医師が、全治一週間程を要する下口唇挫傷との診断を下し、診断書が作成された(乙二三の5、七五の2)。

三日月は、右事件につき、原告松木を傷害罪で大阪府吹田警察署に告訴したが、大阪地方検察庁は、同年九月二八日、右事件を不起訴処分(起訴猶予)とした(乙七五の1・3)。

4  原告松木は、平成四年五月二八日午後二時五〇分ころ、勤務を終えて北事務所二階の事務室に戻り、日報を書いてから所定の箱に入れたところ、山田社長が社長室から出てきて、「松木の出来損ない。点呼せい。」と言ったので、帰社した旨を告げ、帰宅した。

5  被告は、右事件後しばらくは、原告松木を自宅待機させ、事件の進展を見守っていたが、その後自宅待機を解き、職場に復帰させた。そして、被告は、同年一〇月九日、原告松木に対し、同年五月一四日に三日月に対して暴行を加え、傷害を負わせたこと及び同月二八日の入庫点呼義務に違反したことを理由として、同年一〇月一〇日から一七日まで、公休日一日を除く七労働日につき、出勤停止処分(乙二三の1)に付すとともに、右期間の賃金九万〇四〇五円をカットした。

第二  右認定の事実に基づき、全原告主張の不当労働行為の成否について判断する。

一  原告坂の定年解雇について

前記認定のとおり、被告の就業規則による定年は満五五歳とされていたが、前記六名の従業員については、一名を除いて五六歳定年の取扱いがなされていること、職組の組合員である田中が満五五歳に達した後も正社員として勤務していること、山田社長が原告組合の組合員である山本に対し、原告組合からの脱退を条件に五六歳の定年を認めたこと、山田社長が団体交渉において、自交総連の組合員は会社に貢献しない、今までの職場慣行は一切認めないなどと発言していることに徴すると、原告坂の定年解雇の扱いは、被告が原告組合を嫌悪し、原告坂が原告組合の組合員であることを理由に、従前の職場慣行を無視し、原告坂を解雇扱いにすることで経済的、身分的不利益を与え、もって、原告組合の弱体化を計ったものであると認めることができ、このような被告の行為は、労組法七条一、三号の不当労働行為に該当するというべきである。そして、前記認定のとおり、被告は、平成二年一一月六日に原告坂に対する右定年解雇を撤回しているが、このことは、右不当労働行為の成否には影響を与えるものではない。

二  組合員の脱退工作及び組合加入妨害について

前記認定のとおり、山田社長及び山田常務が山本に対し、原告組合の組合員であり続けるなら五五歳で定年退職させるなどと述べて、山本を原告組合から脱退させたこと、被告は、被告の従業員が原告組合の組合員であることにより不利益を被るかのような記載をした前記各社告を掲示したこと、山田社長は、原告組合を脱退後いずれの組合にも加入しなかった従業員に対し、中立であり続けると原告組合の組合員であると同様差別する旨述べ、三浦人事課長は、入社希望者に対し、職組加入が採用の条件である旨述べたこと、実際にも平成二年以降新規に被告に入社した者で原告組合に加入した者がいなかったことなど、前記認定の事実に徴すると、被告が原告組合の組合員を脱退させ、また、被告の従業員が原告組合に加入することを妨害したことは明らかであって、これは、原告組合に対し、その弱体化を企図した労組法七条三号の不当労働行為である。

三  本件配転命令について

前記認定の事実によれば、被告においては、観光業務の経験のない者が入社した場合、専属運転業務、観光バス見習業務、観光バス業務の順に経験を積ませ、それにともなって収入が増加し、地位が上がっていくようなシステムが採用されていること、原告奥田は、昭和六〇年に被告に入社し、平成元年九月以降観光バス業務に従事していること、職組の組合員であり、昭和六三年に被告に入社した加納某、平成元年に入社した田中宏幸及び大橋某は、観光業務の経験がないにもかかわらず、入社後一年未満で観光バス業務に就いており、全く観光業務の経験がない者であっても通常入社後三年程で観光業務に従事していることに照らせば、観光バス見習業務に従事していた原告奥田を専属運転業務に従事させたことは、同原告に対し、収入の減少をもたらすばかりでなく、その地位を低下させ、精神的苦痛を与えたことは、容易にこれを推認することができる。さらに、山田常務が原告奥田に専属運転業務を命ずるに当たって、特段の合理的理由を示さず、単に「自交総連の組合員であるから神戸へもう一遍行け。」などと告げたのみであったことからすると、本件配転命令に合理的理由があったとは認めることができない。これらの事情に、前記各社告の内容を考え併せれば、本件配転命令やその拒否を理由とする出勤停止処分は、原告組合に対する嫌悪感を背景とした労組法七条一号、三号の不当労働行為というべきである。

四  本件担当車両変更について

1  前記認定の事実によれば、被告は、平成二年三月一七日以降同年一一月五日まで、原告組合の組合員の担当車両を変更し、観光業務に就かせなかったが、観光業務と送迎業務とを比較すると、被告においては、観光業務の方が業務の格が上位に位置づけられ、また、通常観光業務は、送迎業務に比して、泊手当て、走行キロ手当てや残業手当てが多額となる上、寸志や紹介料の支払いを受けることができる。原告組合の組合員は、本件担当車両変更の結果、大幅に収入が減少したのであるが、原告組合の組合員が本件担当車両変更の前に得ていたこれらの手当てや寸志、紹介料を右観光業務に就かなかった期間(二三四日)に換算すると、最も多い者で九八万一〇五一円、最も少ない者で五二万一七四七円となる。

2  また、同年一一月六日以降についても、被告の南営業所における観光業務従事日数は原告組合の組合員がその他の従業員より少なかったのに対し、送迎業務従事日数は原告組合の組合員の方が多く、さらに、宿泊を伴う観光業務の従事はその他の従業員の方が多い上、行き先も温泉等比較的寸志、紹介料が多いとみられる観光地なのである。

3  これらの事情に、山田社長が旅行業者に対して「斗う姿勢を崩さず、会社に反発する従業員を会社の代表としてバスに乗車せしめ、皆様のご用命にお応えすることができませんので、現在は宿泊を伴う観光業務を命じていない」旨通知したり、「協力する従業員」と「斗う従業員」という表現で原告組合の組合員以外の者と原告組合の組合員とを区別してアンケート調査を実施したことや親睦団体の豊和会が原告組合の組合員の加入を認めず、それ以外の者のみを会員として懇親会、海外旅行等を催し、被告もこれに援助を行ったり、そもそも右豊和会の結成自体にも被告が深く関与したことが推認できることなどをも併せ考えると、本件担当車両変更及び同年一一月五日以降も原告組合の組合員の従事する観光業務を、行き先、回数等において、その他の従業員より不利に扱っていることは、被告が原告組合を嫌悪し、原告組合の組合員が受け取る各種手当や寸志、紹介料を減少せしめて、経済的不利益を与えたり、被告における業務の格付けを低下させることによって精神的打撃を与えることを狙い、もって、原告組合の弱体化を図ったものというべきである。よって、このような被告の行為は、労組法七条一号、三号に該当する不当労働行為である。

五  自宅待機処分等について

1  前記認定のとおり、被告は、原告組合が平成二年八月以降行った被告の南営業所や山田社長の自宅付近における街頭宣伝活動への参加を理由に、原告らに対する自宅待機処分を行い、被告の貸与した書物を熟読し、その成果を書面に記載して提出するよう命じるとともに、被告が原告らの自宅に電話をして行った点呼に応じなかった場合には欠勤扱いするものとし、右電話による点呼に応じなかった原告らに対し、賃金カット等を行ったのであるが、右各街頭宣伝活動は、前記被告による原告坂の定年解雇、職組の結成、担当車両の変更等の行為を原告組合に対する攻撃として捉え、これに対抗するために行ったものであり、その態様が社会的相当性を逸脱したといえる程度に達していることが窺える事情も見当たらない。確かに、これらの街頭宣伝活動の中には、山田社長の自宅付近で行われたものもあるが、山田社長の自宅は、被告の登記簿上の住所地とされていることや山田社長自らが中心となって原告組合に対する攻撃を行っていたこと、被告の行った不当労働行為の態様等に照らせば、右活動が山田社長の自宅付近で行われたとの一時をもって違法、不当とすることはできない。

2  そうすると、原告組合の行った各街頭宣伝活動は、いずれも適法な労働組合活動に当たるというべきであるから、これに参加したことを理由として原告らに対して行った前記自宅待機等の処分は根拠を欠いた違法な処分といわなければならず、これに違反したことを理由とする右賃金カットもまた、根拠がないというべきであり、右賃金カットは、正当な組合活動を行った原告組合の組合員に経済的不利益を課し、もって原告組合の弱体化を図るものというべきであり、労組法七条一号、三号の不当労働行為に該当する。

六  団体交渉への対応について

1  前記認定のとおり、山田社長は、原告組合の自交総連加盟以降、原告組合の組合員を闘う従業員であり、被告に貢献しない者であるとの見解のもとに、原告組合との団体交渉についても、「一握りの少数組合と再度交渉する意思はない。」、「協力する組合員と話合いが済んでいるのに、闘う組合員と交渉できないのは当然である。」などと発言したり、平成二年五月二四日から同年九月二五日までの間に原告組合が行った団体交渉の申入れに対しても、「本年度の団交は終了した。」などとして、これに応じようとしなかったものであり、被告のこのような対応は、原告組合を嫌悪して、団体交渉を拒否したものであることが明らかである。また、被告は、かつては山田社長が出席できなければ、実りのある団体交渉はできないとして団体交渉に応じなかったことがあるにもかかわらず、同年一〇月一六日以降の団体交渉には山田社長の出席はなく、奥田部長らが出席したものの、単に原告組合の要求を聞いて帰り、次回の交渉に山田社長の回答を伝えることを繰り返し、団体交渉が進まなかったのである。さらに、被告は、平成二年以降の夏季、冬季一時金や平成三年の定期昇給の問題に関しても、原告組合の要求した資料を提示しないばかりでなく、原告組合に対する何らの説明も行っていないのである。確かに、被告は、平成二年一一月五日、原告組合に対し、団体交渉についてのルール作りを提案しているが、前記の対応を考えると、この提案が真に原告組合との団体交渉の円滑な進行を目指したものとはいい難い。

2  以上のとおり、結局、被告の平成二年五月二四日から同年九月二五日までの間の団体交渉拒否及び同年一〇月一六日以降の団体交渉への対応は、労組法七条二号の不当労働行為に当たるといわなければならない。

七  組合旗及び組合事務所の備品の撤去について

1  前記認定のとおり、原告組合が南営業所及び北営業所に組合旗を掲揚していたところ、被告が施設管理権を根拠にその撤去を申し入れ、原告組合がこれに応じなかったとして、南営業所及び北営業所に掲揚されていた組合旗を自力で撤去した。確かに、被告の所有する施設の利用については、被告と原告組合との話合いによって、その利用関係を決定しておくべきものであるが、当時原告組合と被告との間には深刻かつ激しい対立があったことを考えると、そのような話合いが円滑に行われるとは期待し難い面もあり、原告組合が被告に対する抗議の意思を表明し、また、原告組合の組合員の団結を図るために、被告の施設に組合旗を掲揚したことにも相応の理由があったというべきである。

この点について、被告は、南営業所三階のベランダは非常時の避難路であり、障害物の設置が禁止されていたこと、北営業所については隣家から抗議があったことを撤去の理由として主張するが、南営業所の組合旗の掲揚が非常時の避難等の重大な支障となるとは考えられず、また、北営業所の隣家からの抗議についても、原告組合にその旨の事情を説明した形跡がないことからすると、被告自身、さほど重視していなかったことが窺える。そうすると、被告として、右組合旗の撤去を求めるについては、原告組合との交渉を続けたり、法的措置を講ずるなどの方法を選択すべきであったにもかかわらず、自ら性急に組合旗を撤去してしまったのであるが、被告の右行為は、前記の諸事情に照らせば、むしろ原告組合を嫌悪するあまり、原告組合に打撃を与えることを狙って行ったとみるのが相当であり、これは、労組法七条三号の不当労働行為に該当する。

2  また、前記認定のとおり、被告は、平成二年八月二七日に原告組合の事務所内のエアコンを使用不能にするとともに、コピー機を搬出し、同年九月一日に同事務所からソファーを持ち出したが、右コピー機は原告組合が被告から貸与を受けたものであり、右ソファーは原告組合が被告から譲り受けたものである。さらに、エアコンは、被告の所有物ではあるものの、原告組合が平穏に使用を続けていたものであったにもかかわらず、被告は、何ら事前の通告もなく、突如右のような実力行使に及んでいる上、被告がこのような行為に及ばなければならないような事情も見受けられないことからすると、被告の右行為は、原告組合を嫌悪し、原告組合に打撃を与えることを狙って行った労組法七条三号の不当労働行為に該当するというべきである。

八  平成二年度以降の夏季、冬季一時金について

1  まず、平成二、三年度の夏季、冬季一時金についてであるが、前記認定のとおり、平成二、三年度に原告らに支給された夏季、冬季一時金は、原告山下の平成三年度冬季一時金を除き、平成元年度の夏季、冬季一時金に比して減額されているが、原告組合の組合員以外の従業員については、これらの一時金が減額された形跡はなく(却って、平成二年度の夏季一時金については、原告組合の調査に応じた二一名全員が、平成元年度の夏季一時金よりも増加した旨述べている。)、また、被告は、昭和六二年度の夏季一時金を前年度より減額した際、従業員に対して、その理由を説明していたにもかかわらず、右平成二、三年度の原告らに対する一時金の減額については何らの説明もしていない。

被告は、この点について、一時金は従業員に対する個別の査定に基づくものである旨主張するが、その詳細や原告らの個別の査定についての主張、立証をしないことに照らせば、被告の右主張は採用できない。

右の事情に、山田社長が前記社告において、原告組合の組合員は余程の貢献がなければ平均点を上回ることは難しい旨を述べ、原告組合の組合員に対する評価を厳格に行うことを表明していることを併せ考えると、右各一時金の減額支給は、被告が原告組合を嫌悪し、その組合員に経済的不利益を与えることによって原告組合の弱体化を企図したものと考えるのが相当であり、被告の右行為は、労組法七条一号、三号の不当労働行為に該当するというべきである。

2  これに対し、平成四、五年度の夏季、冬季一時金は、証拠(乙七三の1ないし6、七四の1ないし6、証人奥田)によれば、被告は、職組との間で平成四年度の夏季、冬季一時金をそれぞれ基本給の平均2.8か月分、平成五年度の夏季一時金を同じく2.5か月分、冬季一時金を同じく2.45か月分、平成六年度の夏季一時金を同じく2.0か月分、冬季一時金を同じく2.41か月分とする旨の協定を締結し、そのとおりの支払いがなされたこと、被告は、原告組合との間でも同内容の協定を締結しようとしたが実現しなかったこと、被告は、原告らに対し、職組との間で決められたのと同率の金員を平成四年度から平成六年度の夏季、冬季一時金として支給したことが認められる。そして、原告らが支給を受けるべき右期間の一時金が職組所属の組合員の一時金を上回らなければならない事情は窺えないから、平成四、五年度の夏季、冬季一時金に関する限りは、原告らが職組所属の従業員と差別的な取扱いを受けているとはいえず、よって、右各年度の各一時金の支給をもって、不当労働行為とすることはできない。

九  平成三年度の定期昇給について

前記認定のとおり、平成三年度の定期昇給において、原告組合の組合員の昇給率が他の従業員の昇給率を下回っていたが、被告が原告組合に対し、その理由を説明した形跡はない。

被告は、この点について、右定期昇給は、従業員に対する個別の査定に基づくものである旨主張するが、その詳細や原告らの個別の査定についての主張、立証をしないことに照らせば、被告の右主張は採用できない。

右の事情に、前記山田社長が原告組合の組合員に対する評価を厳格に行うことを表明していることを併せ考えると、原告組合の組合員に対する定期昇給が他の従業員に比して少額であることは、前記一時金の減額支給と同様、被告が原告組合を嫌悪し、その組合員に経済的不利益を与えることによって原告組合の弱体化を企図したものと認めるのが相当であるから、被告の右行為は、労組法七条一号、三号の不当労働行為に該当するというべきである(ただし、原告水澤、同奥田、同佐藤、同道方及び上野については、その定期昇給率が原告ら主張の他の従業員の定期昇給率を上回っているのであり、これらの原告らに関しては、差別的取扱いがあったとはいえないから、不当労働行為が成立するのは、右原告を除いたその余の原告の定期昇給に限られる。)。

一〇  一斉休暇闘争を理由とする賃金カットについて

前記認定のとおり、被告は、平成四年六月二四日、原告中田及び同松下を除くその余の原告らに対し、前記賃金カットを敢行したが、その理由は、右原告らが同月一九日に原告組合が開催した地方労働委員会の救済命令の発令を受けて原告組合と被告との紛争の早期解決及び吹田警察署への抗議活動等を議題とする臨時大会に参加するため、同月一四日から一八日にかけて申請した有給休暇を認めず、右臨時大会への出席が無断欠勤に当たるということにあった。しかしながら、右臨時大会は、当初、同月一二日に予定されていたものが、奥田常務が多忙期を理由に当日の有給休暇の取得を認めなかったために一週間延期して行われたものである上、前記原告らが有給休暇の取得を申請した際、被告の側からは何ら異議が出された形跡がないことからすると、原告中田及び同松下を除くその余の原告らの右有給休暇は有効に取得されたというべきである(なお、有給休暇は、労働者の当然の権利であり、その取得に当たって、使用者の同意等を要しないし、休暇利用の目的に制限はないというべきであるから、被告において、有給休暇の取得には会社側の事前の了解を得るよう求められていたり、届出用紙に前記記載があったとしても、右判断に影響を及ぼすものではない。)。そして、原告らは、それまでにも地方労働委員会の審問、組合大会への参加等のために一斉に有給休暇を取得したことがあるが、その際には被告もこれを許容していたこと、右臨時大会や吹田警察署への抗議活動に参加しなかった原告伊東及び同山下に対しては後日カット分の賃金が支払われたことに照らせば、被告の行った右賃金カットは、根拠がないのみならず、原告組合の組合員が臨時大会に参加し、あるいは警察署への抗議活動を行ったことをついて、原告組合を嫌悪し、組合に不利益を与えて、原告組合の弱体化を企図した労組法七条一号、三号所定の不当労働行為に該当するといわなければならない。

一一  原告松本に対する配転命令、出勤停止処分及び賃金カットについて

1  まず、配転命令について検討するに、被告の就業規則三七条一項には、「業務の都合により必要がある場合は、従業員に異動(配置転換、転勤、出向)を命じまたは担当業務以外の業務につかせることがある」との規定があるが、当時、南営業所整備課において、人手が不足するなど、原告松木に業務を命じる必要性があったことを窺わせる事情は見当たらない。さらに、前記認定の被告の勤務体制からすれば、観光バス業務に従事していた松木が整備課の仕事をすること自体異例の扱いであったと認められる上、原告松木が特に整備に優れているなどの事情もないことに照らせば、右配転命令が業務上の必要性に基づいて発せられたとはいえない。

被告は、この点について、原告松木については、下品な言動や異様な風体をしていたことから、苦情の申し出が絶えなかったことが理由である旨主張するが、そのような事実を認めるに足る的確な証拠がないから、被告の右主張は採用しない。

2  次に、出勤停止処分について検討する。確かに、三日月が平成四年五月一四日に下口唇に負傷していたのではあるが、前記運転免許証が入っていたケースの形状やその提示の際の状況、運転免許証提示の際に三日月が原告松木の行為によって負傷したことを窺わせる行動を示した形跡がないことなどに照らせば、三日月の右負傷が原告松木の行為によると断定することはできない。また、入庫点呼違反の事実についても、前記認定のとおり、原告松木は、入庫点呼を完了したというべきであるし、ほかに原告松木が入庫点呼を実施しなかったことを認めるに足る的確な証拠はない。

3  確かに、前掲各証拠によれば、原告松木の勤務態度は、度々処分を受けるなど、必ずしも芳しいとはいえない面があったことは否定できないが、少なくとも、右出勤停止処分は、その根拠がないというべきである。

4  右の次第で、原告松木に対する配置命令や自宅待機命令は、いずれもその根拠を欠いているばかりでなく、前記認定の経過に照らせば、被告が原告組合を嫌悪し、執行委員である原告松木に不利益を与え、ひいては原告組合の弱体化を企図した労組法七条一号、三号所定の不当労働行為に該当するというべきである。

第三  全原告に対する不法行為等の成否及び損害と賃金債権の存否

一  原告組合について

1  前記判示のとおり、被告の原告坂の定年解雇、原告組合の組合員に対する脱退工作及び組合加入妨害、本件配転命令、本件担当車両変更及びその後の業務内容における差別、自宅待機処分等、団体交渉拒否及び不誠実な団体交渉、組合旗及び組合事務所の備品の撤去、平成二、三年度の夏季、冬季一時金、平成三年度の定期昇給及び一斉休暇闘争を理由とする賃金カット、原告松木に対する配置転換、出勤停止処分や賃金カットは、いずれも原告組合に対する不当労働行為に該当するというべきである。

ところで、労働組合は、労働者の労働条件の維持、向上等の目的のもとに結成された団体であって、使用者と対等の交渉当事者として労働者の経済的地位の向上のために活動することが保障されている(労組法一条一項、二条)ばかりでなく、使用者による支配、介入は、労働組合の自主性を損なうものとして堅く禁止されている(同法七条三項)。かような法の趣旨に照らせば、被告が行ったように、労働組合が特定の上部団体に加盟したことを理由とし、所属組合員に不利益を課することは、ひいては労働組合に対する支配、介入行為となり、法律上許されないというべきである。このような意味において、労働組合は、使用者から支配、介入を受けないという法律上の利益を有するといえるのであり、被告の右各行為は、原告組合の右法律上の利益を侵害するものである。

そして、被告の右各行為は、原告組合が自交総連に加盟したときから、山田社長らの偏見に基づき、原告組合を敵視して行われた一連の行為で、その期間も長期に及び、態様も執拗かつ悪質というべきである上、原告組合の主張を是認した救済命令や仮処分がなされたにもかかわらず、これを尊重し、遵守することもなかったとの事情を総合すると、社会的相当性の見地からも著しく逸脱し、強度の違法性があるというべきであるから、単に原告組合に対する不当労働行為とされるだけでなく、原告組合に対する不法行為を構成するというべきである。

2  ところで、右不法行為によって生じた金銭的損害につき、原告組合は、別紙(二)原告別損害一覧表及び別表2記載のとおり、合計一七九五万〇二三六円を主張する。

原告組合の主張する右損害は、専ら被告に対して行った地方労働委員会への救済申立ての審問、裁判所に対する仮処分、街頭宣伝活動、ビラ配布など被告への対抗措置やその準備に要した費用、これらの活動に参加した弁護士、組合員に支給する補償、右審問や仮処分について支払った弁護士報酬等であるが、本来使用者の不当労働行為に対抗するためには、労使間における抗議や交渉、地方労働委員会や司法による救済、街頭宣伝活動等による市民への訴えや支援の要請等さまざまな方法が考えられるが、そのうちのどの方法を選択するか、どのような範囲、規模、態様で行うかは、労働組合の意思に委ねられているというべきであって、労働組合がある手段を選択し、これを実行するために費用を要したとしても、それが直ちに損害になるものではない。

そして、原告組合が主張する損害のうち、参加者の飲食費などが損害に当たらないことは明らかであるが、その余の費用についても、被告の不当労働行為から通常発生するものとはいえないから、これらの費用を本件不当労働行為と相当因果関係のある損害として被告に賠償を求めることはできないというべきである。

3  もっとも、被告の前記各行為は、原告組合に対する不法行為を形成し、原告組合は、右不法行為により、右支配、介入を受けないという法律上の利益を侵害されたというべきであるから、このことによって、原告組合が無形の損害を被ったことは容易に推測できるのであり、この損害については、被告に金銭をもって賠償する責任があると解すべきである。

二  原告らについて

1  前記認定のとおり、被告が行った行為のうち、本件担当車両変更及びその後の業務内容における差別、平成二、三年度の夏季、冬季一時金の減額、街頭宣伝活動を理由とする自宅待機処分、平成三年の定期昇給(ただし、前記原告組合の組合員以外の従業員の昇給率を上回った原告らの分を除く)、平成四年六月の有給休暇を付与しなかった行為及び原告松木に対する整備課への配転命令、出勤停止処分は、いずれも原告組合に対する不当労働行為に該当するが、それとともに、その対象とされた原告らとの関係においても、経済的不利益を与え、多大の精神的負担を被らせているのであるから、同時に不法行為を構成するというべきである。

2  なお、原告らは、寸志、紹介料差額につき、被告が少なくとも他の従業員と公平に、原告らを寸志、紹介料の支払いを受けられる業務に従事させるという契約上の業務に違反したことを理由に、労働契約上の債務不履行に基づく損害賠償を予備的に請求し、右予備的請求については消滅時効が完成していない旨主張する。

前記認定の事実によれば、被告における観光業務においては、顧客から寸志を受け取ったり、観光地の土産物店から紹介料の支払いを受けることが多く、これが運転手の収入の大きな部分を占めており、被告もこのこと知りながら、原告らとの間で、雇用契約を締結したが、原告らに対し、寸志や紹介料を得られる業務に従事させることを契約内容として明示したり、原告らの従事する業務を観光業務に限定していたわけではないこと、被告における運転業務には、観光業務以外に送迎業務もあることが認められ、これらの事情を総合すると、被告は、原告らに対し、雇用契約上当然に寸志、紹介料を得られる観光業務に従事させる義務を負担しているとはいえない。

よって、原告らの右主張は、その前提を欠く失当なものといわざるを得ない。

三  次に、全原告が被った損害等についての検討に先立ち、被告の消滅時効等の主張を判断する。

1  まず、被告の消滅時効の主張の判断の前提として、原告らの請求内容について検討する。

(一) 全原告は、平成五年六月三〇日、当裁判所に、本件訴状を提出したが、右訴状では、原告らが被告に勤務する労働者であること及び本件各不法行為の事実を主張した上で、原告組合については、不法行為に基づき、被告への対抗に要した費用一七九五万〇二三六円、慰謝料及び弁護士費用各五〇〇万円、原告松木については、平成四年六月二四日の賃金カット分二万五八三〇円、出勤停止処分にともなう未払賃金九万〇四〇五円及び慰謝料三〇〇万円、原告松村昭男、同坂、同谷口、同水澤、同松村高喜、同奥田、同佐藤及び同道方については、平成四年六月二四日の賃金カット分、これと同額の付加金及び慰謝料各一八〇万円、その余の原告らについては、慰謝料各一八〇万円の支払いを求めたが、右平成四年六月二四日の賃金カット分については、請求原因中で違法、無効であるとの主張をし、これを損害とも、賃金カット分の請求であるとしている。そして、原告らは、平成六年九月三〇日、請求の趣旨拡張の申立書を提出、陳述し、原告らにつき、手当金差額、寸志、紹介料差額の各損害賠償、夏季、冬季一時金差額の請求原因の主張の追加(平成二年度冬季から平成五年度冬季までの分)及び平成二年度夏季分以降の一時金差額相当額の損害賠償、街頭宣伝活動を理由とする自宅待機処分に基づく賃金カット分の損害賠償並びに昇給差額の損害賠償を追加して求めるとともに、慰謝料請求を原告松木については五七〇万円に、その余の原告らについては二七〇万円に、それぞれ拡張したが、右申立書における原告らの請求は、いずれも、慰謝料については精神的損害、その余については財産的損害の標題の下に記載されている。さらに、原告らは、平成八年五月一日付け準備書面(同年四月一五日受付)において、原告らの各賃金カット分の請求は、不法行為に基づく損害賠償請求であるとともに、未払賃金請求でもある旨を主張し、さらに、同年四月三〇日付け準備書面(三枚綴りの分)において、寸志、紹介料差額につき、雇用契約上の債務不履行を理由とする損害賠償を予備的に請求する旨主張した(これらの事実は、本件記録上明らかである。)。

(二) 右の主張経過に照らせば、全原告の訴状における請求は、原告松木の出勤停止処分にともなう賃金カット分九万〇四〇五円及び原告らの平成四年六月二四日の賃金カット分の請求は、不法行為に基づく損害賠償と雇用契約に基づく未払賃金請求を選択的に併合して請求するものであり、平成六年九月三〇日の請求の趣旨拡張の申立書によって追加請求された街頭宣伝活動を理由とする自宅待機処分に基づく賃金カット分の請求は、不法行為に基づく損害賠償請求であったが、平成八年五月一日付け準備書面において、新たに右カット分につき、雇用契約に基づく未払賃金請求が追加請求されたものと解するのが相当である。そして、右各請求以外の原告組合の及び原告らの請求は、いずれも不法行為に基づく請求と認める。

2  そうすると、本件口頭弁論終結の時点における原告組合の請求は、不法行為に基づく損害賠償請求であり、原告らの請求は、いずれも不法行為に基づく損害賠償請求と賃金カット分についての雇用契約に基づく未払賃金請求(選択的)であり、そのうち寸志、紹介料差額分については、債務不履行に基づく損害賠償が予備的に請求され、併せて平成四年六月二四日の賃金カット分についての付加金請求がされていることになる。

四  ところで、原告らは、右判示のとおり、街頭宣伝活動を理由とする自宅待機処分に基づく賃金カット、平成四年六月二四日の賃金カット及び原告松木の出勤停止処分にともなう賃金カットにつき、それぞれカット額相当分の不法行為に基づく損害賠償を請求している。しかしながら、前記のとおり、右賃金カットは、いずれも無効であるから、右原告らは、右賃金請求権を失っていないというべきであり、よって、右原告らには、いまだ右損害は発生していないと認めるのが相当である(なお、後記判示のように、右賃金請求権が時効により消滅したとしても、これをもって右不法行為による損害の発生ということはできないことは明らかである。)。

したがって、右原告らの右各賃金カット相当額の損害賠償請求は、その余の点につき判断するまでもなく失当である。

五  すすんで、被告の消滅時効の主張の当否について検討する。

1  不法行為に基づく損害賠償請求権について

(一)(1) 被告は、平成八年五月一日の本件口頭弁論期日において、原告組合の平成二年六月二一日までに生じた損害の賠償請求、原告らの平成三年九月二九日までの手当差額、寸志、紹介料差額及び一時金差額の損害賠償請求、昇給差額の損害賠償請求、原告らの慰謝料請求のうち平成二年九月二九日までに生じた分について、それぞれ消滅時効を援用する。

これに対し、全原告は、被告の不法行為が原告組合の破壊を目的に、平成元年一二月以降現在に至るまで継続して行われており、全原告は、包括して一個の損害を被っていることを理由に、消滅時効が進行しない旨主張する。

(2) 前記認定の事実によれば、被告のした不法行為(不当労働行為)は、数多く、時系列的には連続していることは、否めないところであるが、右各不法行為自体は、別個のものというべきである。そして、原告らの主張する損害は、被告による個々の不法行為から生じたものであるから、その消滅時効についても、個々の不法行為が行われ、それに対応する損害が発生したときから、独立して、時効が進行するというべきである。

よって、全原告の右主張は、採用しない。

(二) 全原告は、原告らが損害及び加害者を知ったのは、請求の趣旨拡張申立て(平成六年九月三〇日)の直前であり、そのときから時効の進行が開始する旨主張する。

しかしながら、前記認定の事実によれば、原告らは、被告の不法行為を認識しており、また、右不法行為による損害も、その都度算定が可能であったというべきであるから、全原告の右主張も採用しない。

(三) また、全原告は、被告の消滅時効の援用が信義に反し許されない旨を主張する。確かに、被告は、全原告に対し、長期間にわたって、不法行為を行っていることは前記認定のとおりであるが、このことから直ちに消滅時効の援用が信義に反するとまではいえないし、ほかに原告らの右主張の根拠となる事情は窺えない。

よって、原告らの右主張も採用しない。

(四) さらに、全原告は、本件訴状は被告の不法行為によって生じた損害の一部を請求したもので、それが一部請求であることを明示していないから、時効中断の効力は、訴えが提起されていない部分にも及び、したがって、その後請求の趣旨拡張申立書において拡張された請求についても時効が中断されている旨主張する。

しかしながら、明示のない一部請求で、当該債権の全部に時効中断の効力が生じるとしても、それは、当該一部請求と訴訟物を同じくする範囲に限られると解すべきである。本件のように、原告組合の弱体化という同一の目的のもとに行われた一連の行為であっても、個々の不法行為と損害とが対応し、独立性を有する場合には、各不法行為ごとに一個の訴訟物を構成し、したがって、原告らが、本件訴状においてすべての不法行為を主張し、そのうちの特定の不法行為によって生じた損害のみの賠償を求めていたとしても、そこで請求の対象としなかった損害賠償請求権につき、消滅時効中断の効力は及ばないというべきである。

よって、原告らの右主張は採用しない。

(五)(1) 以上判示のとおり、被告の消滅時効の主張を排斥する理由はない。そして、その消滅時効の期間は、原告らが加害者及び損害を知ったときから三年であるが、前記認定にかかる本件不法行為の態様や原、被告の関係等を考慮すると、原告らは、本件各不法行為のときに、加害者及び損害を知ったと認めるのが相当である。

(2) そうすると、原告らの手当差額、寸志、紹介料差額、一時金差額及び昇給差額(平成三年四月分)については、その請求がなされた平成六年九月三〇日の時点で既に三年が経過した平成三年九月二九日までの手当差額、寸志、紹介料差額、一時金差額及び昇給差額の全額について、消滅時効が完成したというべきであるから、原告らが被告に損害賠償請求をし得るのは、同月三〇日以降の手当差額、寸志、紹介料差額、一時金差額だけである。

(3) また、全原告の慰謝料の請求根拠は、平成二年三月一六日付け業務内容変更命令及び右命令後も継続している業務内容差別、平成二、三年の夏季、冬季一時金差別、前記街頭宣伝活動に関する自宅待機処分に基づく賃金カット(平成二年九、一〇月)平成三年四月の昇給差別及び平成四年六月二四日の賃金カットである。そして、これらの不法行為は、個別に発生し、原告らの精神的損害も、その都度生じているというべきである。したがって、本件訴え提起日から三年前の平成二年六月二九日以前に発生した不法行為を原因とする慰謝料請求権は既に時効により消滅したから、原告らの慰謝料の算定についても、この点が考慮されるべきである。

2  賃金請求権について

(一) 被告は、平成八年五月一日の本件口頭弁論期日において、原告らの未払賃金請求権のうち、①自宅待機処分による賃金カットについて、各支払日から二年を経過した平成四年九月二五日、あるいは同年一〇月二四日の経過により消滅した旨、②平成四年六月二四日の賃金カットについて、支払日から二年を経過した平成六年六月二四日の経過により消滅した旨それぞれ時効を援用する。

(二) まず、右①につき検討するに、被告における賃金の支払いは、毎月二〇日締め、二四日払い(平成二年九月分については、二五日払い)である(弁論の全趣旨)ところ、前記判示のとおり、原告らは、自宅待機処分による賃金カット分につき、賃金請求をしたのは、平成八年五月一日付け準備書面においてであるから、自宅待機処分による賃金カット分の賃金請求権は、各支払日から二年を経過した平成四年九月あるいは同年一〇月二四日の経過により消滅したものというべきである(なお、右賃金カット分の請求が本件訴状(平成五年六月三〇日)においてされていたとしても、その結論に変わりはない。)。

よって、被告の右主張は理由がある。

(三) 次に、②につき検討する。

原告らは、平成四年六月二四日の賃金カット分の賃金請求を本件訴状においてしていることは前記判示のとおりであるから、これより後に時効消滅したことをいう被告の右主張は主張自体失当であり、採用し難い。

六  不法行為による原告らの損害額について検討する。

1  本件担当車両変更及びその後の業務内容差別について

(一)  原告らは、平成二年三月一六日の担当車両変更によって、それまで従事していた観光業務に就くことができなくなり、また、同年一一月六日以降の担当車両に戻された後も、主に送迎業務を担当させられ、観光業務に従事する回数が減少したのである。通常観光業務は、宿泊を伴い、遠距離となることが多いため多額の各種手当ての支給を受けられる上、乗客や土産物店からの寸志、紹介料の支払いが受けられるなど収入面での利点がある。そして、原告らは、観光業務をはずされ、あるいはこれに就く回数を減らされたために、これらの収入を受けられなくなり、その機会を減少させられてしまったのであるから、右各種手当て、寸志、及び紹介料の減少分が原告らの損害に当たるというべきである。

これに対し、被告は、各種手当ては実際の労働内容に対応するもので実際にこれらの手当ての根拠となる労働に従事していない以上その支給を受けられないのは当然であるから、これをもって損害となし得ないし、寸志、紹介料に至っては、被告の関係のない乗客や土産物店が支払うもので、支払うかどうか、またその金額も確定したものではないから、損害とはならない旨主張する。

確かに、各種手当ては、実際に行った労働により、支給の有無や金額が自動的に決せられるものではあるが、前記のとおり、観光業務の方が送迎業務に比して少なくとも各種手当てが多額に支給されるし、原告らがどのような業務に就くかは被告の指示に基づくものである。さらに、前記のとおり、山田社長が原告組合の組合員はとことん食えないようにしてやるなどと公言していたことなどの事情に鑑みれば、被告としては、原告組合の組合員に対し、経済的不利益を与える意図をもって、右担当車両の変更を行ったというべきであるから、このことによって原告らに生じた各種手当ての減少分は賠償すべき損害に当たると認める。また、寸志、紹介料についても、前記のとおり、会社は従業員が乗客や土産物店から寸志、紹介料を受け取っていることを認識し、かつ、それが従業員の重要な副収入となっていることを知りながら、原告らを寸志、紹介料の収入が多い観光業務からはずし、あるいはその機会を減少させたのであるから、そのことによって原告らに生じた寸志、紹介料の減少分も賠償すべき損害に当たると認める。

(二) 次に、損害額について検討するに、各種手当てや寸志、紹介料は、ときどきの営業状況や乗務の内容に応じて変化するものであり、また、寸志、紹介料については支払いの有無や金額を予測することは困難な面があることは否定できないが、証拠(甲一二四、弁論の全趣旨)によれば、平成元年度に原告らが取得していた各種手当ての額が別紙(一二)年度別差額金一覧表記載のとおりであり、寸志、紹介料の額が別紙(八)寸志、、紹介料損害金計算表記載のとおりであった(ただし、原告山下の分については後述)ことが認められ、それ以後、被告の売上げが大きく減少したとの事情も窺えない(被告は、平成元年を頂点として売上げが減少した旨主張し、証人奥田も同旨の供述をするが、被告は、これを裏付ける客観的資料を提出しないから、被告の右主張は採用しない。)。

以上の事実を前提とし、さらに、各種手当てや寸志、紹介料が不確定性を帯びた収入であることをも考慮したとき、原告らの損害算定の基準は、右各表記載の平成元年における各種手当てや寸志、紹介料の収入が最も少ない者に求めるのが相当である。そして、右の観点から平成元年の原告らの各種手当及び寸志、紹介料の収入額をみると、各種手当てについては、その金額が最も少ない者は原告奥田の年間六一万五八四六円であるから、右金額から別紙(一二)年度別差額金一覧表記載の原告らの平成三年九月三〇日以降に支払われた各種手当(消滅時効が完成していない分、平成三年の金額は、右六一万五八四六円の四分の一として算出)について、右金額より低い金額との差額を合計すると、別紙(一四)認容額の内訳、手当差額合計欄記載のとおりとなる。

(三) また、寸志、紹介料の金額が最も少ないのは、甲一二四号証によれば、原告山下の一か月平均六万七七五〇円であり、平成三年九月三〇日以降に支払われた各種手当(消滅時効が完成していない分)の額は、右金額から平成五年の寸志、紹介料の受領額が最も多かった原告谷口の四万六〇一七円を控除した額に三三か月と一日を乗じた七一万七九一三円となるから、右各金額が原告らの損害額となるというべきである。

(四) よって、被告は、原告らに対し、別紙(一四)認容額の内訳、手当差額合計及び寸志、紹介料差額合計各欄記載の金額とこれらに対する弁済期後である平成六年一〇月一日から支払済みに至るまで民法所定年五分の割合による遅延損害金を支払わなければならない。

2  平成二、三年の夏季、冬季一時金の減額

(一) 前記のとおり、原告らに対する平成二、三年の夏季、冬季一時金の減額が、不法行為を構成するので、被告は、右各一時金の減額によって原告らに生じた損害を賠償しなければならない。もっとも、平成二、三年度の夏季一時金及び平成二年度の冬季一時金は、すでに時効によって消滅したので、原告らの損害となるのは平成三年度の冬季一時金の減額分だけである。そして、その額は、原告らが平成元年度に支給された冬季一時金を基準とし、これらの額から原告らが実際に支給を受けた一時金額を控除した金額とするのが相当である。

そして、前記のとおり、原告らに支給された平成元年度及び平成三年度の各冬季一時金の額は、別紙(一三)一時金差額一覧表記載のとおりであり、その差額は、同表九一年冬季一時金の八九年との差額欄記載のとおりとなる。

(二) これに対し、被告は、一時金は査定により決せられるもので、その額も各原告により異なる旨主張する。確かに、通常の一時金支給の在り方からいえば、査定の対象となる期間における会社の収益、各従業員の勤務や出勤の状況、勤務態度等の諸要素に基づき、各従業員に対する支給額が決められるものであるが、被告は、前記1で述べたのと同様、被告の売上げが平成元年度を境に減少している旨及び一時金の決定は管理職による査定に基づく旨主張するだけで、その資料の提出や具体的内容を主張、立証しないのであるから、前記のとおり、原告らの損害の算定に当たっては、原告らの平成元年度における支給額を基準とするほかはない。

(三) よって、被告は、原告らに対し、別紙(一四)認容額の内訳、一時金差額欄記載の各金額とこれらに対する弁済期後である平成六年一〇月一日から支払済みに至るまで民法所定年五分の割合による遅延損害金を支払わなければならない。

3  慰謝料

前記認定の事実によれば、原告組合及び原告らは、被告による前記不法行為により、多大の精神的損害(原告組合においては無形損害)を被ったことは容易に推測され、被告は、原告らに対する右損害に対する慰謝料等の支払業務を負うというべきである。もっとも、前記のとおり、被告に対する不法行為を理由とした損害賠償請求権には、既に消滅時効が完成した分(平成二年六月二九日までに生じた分)もあるが、被告の行った不法行為の性質や態様、全原告に与えた打撃、継続期間等本件に顕れた一切の事情に鑑みれば、原告組合に対する慰謝料は、二〇〇万円、原告らに対する慰謝料額は、原告松木に対しては三〇万円、その余の原告らに対しては各二〇万円が相当である。

よって、被告は、原告組合に対し、二〇〇万円、原告松木に対し、三〇万円、その余の原告らに対し、各二〇万円と右各金員に対する弁済期後である平成六年一〇月一日から各支払済みに至るまで民法所定年五分の割合による遅延損害金を支払わなければならない。

4  弁護士費用

原告組合については、二〇万円の弁護士費用を損害とするのが相当である。

よって、被告は、原告組合に対し、二〇万円とこれに対する弁済期後である平成六年一〇月一日から各支払済みに至るまで民法所定年五分の割合による遅延損害金を支払わなければならない。

七  原告らの未払賃金請求について検討する。

1  前記のとおり、被告が原告松木に対して行った整備課への業務内容変更命令及び出勤停止処分は、いずれも違法、無効というべきであるから、この処分に基づく賃金カットも根拠を欠くこととなる。したがって、被告は、原告松木に対して平成四年一〇月分の賃金からカットした分につき、いまだその支払義務を免れない。

よって、被告は、原告松木に対し、右賃金カット分九万〇四〇五円とこれに対する弁済期後である平成六年一〇月一日から支払い済みに至るまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金を支払わなければならない。

2  前記のとおり、平成四年六月一九日の有給休暇を付与せず、同月二四日にした賃金カットは違法、無効であるから、原告伊東、同松下及び同中田を除くその余の原告らは、被告に対し、右賃金カット分の賃金請求権を有するものというべきである。

よって、被告は、右原告らに対し、右賃金カット分の賃金(別紙(一四)認容額の内訳、平成四年六月賃金カット欄記載)と右各金員に対する弁済期後である平成六年一〇月一日から各支払い済みに至るまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金を支払わなければならない。

八  付加金請求について、検討する。

前記判示のとおり、被告は、原告伊東、同松下及び同中田を除くその余の原告らに対し、平成四年六月一九日の有給休暇を認めず、賃金カットした分の賃金の支払義務を負うべきところ、前記認定の事情を総合勘案すると、被告に対し、労基法一一四条に基づき、右賃金カット分と同額の付加金の支払いを命じるのが相当である。そして、右付加金の履行期は、本判決確定時と解するのが相当であるから、被告は、右原告らに対し、七2の金額と同額の金額及び右各金員に対する本判決確定の日の翌日から各支払い済みに至るまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金を支払わなければならない。

第四  結語

以上の次第で、原告組合及び原告らの請求は、前記六ないし八記載の限度で認容し、その余は理由がないからいずれも棄却し、訴訟費用の負担につき、民訴法八九条、九二条、九三条を、仮執行宣言につき、同法一九六条をそれぞれ適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官松山恒昭 裁判官長久保尚善 裁判官井上泰人)

別紙(三)〜(七)〈省略〉

別紙(九)〜(一一)〈省略〉

別紙(一五)〈省略〉

別紙別表〈省略〉

別紙(一)

原告名

請求金額

原告組合

2795万0236円

松木正行

1328万0760円

松村昭男

888万1229円

坂正治

983万5382円

谷口照雄

651万1600円

水澤勝三

646万7381円

松村高喜

792万9544円

奥田拓央

735万3844円

佐藤利之

828万6079円

道方義夫

813万7445円

伊東幸一

754万3275円

山下兼二

843万2899円

松下末宏

894万2137円

中田郁夫

705万7265円

別紙(二)

原告別損害一覧表原告番号1 組合

(1) 被告会社の不当労働行為に対抗するために要した費用

17,950,236円

(2) 慰謝料

5,000,000円

(3) 弁護士費用

5,000,000円

総合計

27,950,236円

原告番号2 氏名 松木正行

(1) 手当差額合計

1,093,591円

(2) 寸志・紹介料差額合計

5,242,689円

(3) 一時金差額合計

1,037,100円

(4) 街頭宣伝賃金カット額

84,322円

(5) 昇給差別額

6,823円

(6) 臨時大会賃金カット額

12,915円

同賃金カット付加金

12,915円

(7) 出勤停止命令賃金カット額

90,405円

(8) 慰謝料合計

5,700,000円

総合計

13,280,760円

原告番号3 氏名 松村昭男

(1) 手当差額合計

1,101,013円

(2) 寸志・紹介料差額合計

4,500,792円

(3) 一時金差額合計

484,100円

(4) 街頭宣伝賃金カット額

66,180円

(5) 昇給差別額

5,236円

(6) 臨時大会賃金カット額

11,954円

同賃金カット付加金

11,954円

(7) 慰謝料合計

2,700,000円

総合計

8,881,229円

原告番号4 氏名 坂正治

(1) 手当差額合計

2,353,086円

(2) 寸志・紹介料差額合計

3,543,256円

(3) 一時金差額合計

1,205,446円

(4) 街頭宣伝賃金カット額

――

(5) 昇給差別額

10,694円

(6) 臨時大会賃金カット額

11,450円

同賃金カット付加金

11,450円

(7) 慰謝料合計

2,700,000円

総合計

9,835,382円

原告番号5 氏名 谷口照雄

(1) 手当差額合計

1,047,502円

(2) 寸志・紹介料差額合計

2,422,100円

(3) 一時金差額合計

256,100円

(4) 街頭宣伝賃金カット額

60,918円

(5) 昇給差別額

2,866円

(6) 臨時大会賃金カット額

11,057円

同賃金カット付加金

11,057円

(7) 慰謝料合計

2,700,000円

総合計

6,511,600円

原告番号6 氏名 水澤勝三

(1) 手当差額合計

686,728円

(2) 寸志・紹介料差額合計

2,479,135円

(3) 一時金差額合計

524,400円

(4) 街頭宣伝賃金カット額

58,450円

(5) 昇給差別額

――

(6) 臨時大会賃金カット額

9,334円

同賃金カット付加金

9,334円

(7) 慰謝料合計

2,700,000円

総合計

6,467,381円

原告番号7 氏名 松村高喜

(1) 手当差額合計

1,269,193円

(2) 寸志・紹介料差額合計

3,237,288円

(3) 一時金差額合計

652,100円

(4) 街頭宣伝賃金カット額

53,571円

(5) 昇給差別額

140円

(6) 臨時大会賃金カット額

8,626円

同賃金カット付加金

8,626円

(7) 慰謝料合計

2,700,000円

総合計

7,929,544円

原告番号8 氏名 奥田択央

(1) 手当差額合計

473,505円

(2) 寸志・紹介料差額合計

3,701,268円

(3) 一時金差額合計

413,000円

(4) 街頭宣伝賃金カット額

49,133円

(5) 昇給差別額

――

(6) 臨時大会賃金カット額

8,469円

同賃金カット付加金

8,469円

(7) 慰謝料合計

2,700,000円

総合計

7,353,844円

原告番号9 氏名 佐藤利之

(1) 手当差額合計

1,117,649円

(2) 寸志・紹介料差額合計

3,698,293円

(3) 一時金差額合計

700,500円

(4) 街頭宣伝賃金カット額

52,577円

(5) 昇給差別額

――

(6) 臨時大会賃金カット額

8,530円

同賃金カット付加金

8,530円

(7) 慰謝料合計

2,700,000円

総合計

8,286,079円

原告番号10 氏名 道方義夫

(1) 手当差額合計

1,192,099円

(2) 寸志・紹介料差額合計

3,414,133円

(3) 一時金差額合計

763,300円

(4) 街頭宣伝賃金カット額

51,261円

(5) 昇給差別額

――

(6) 臨時大会賃金カット額

8,326円

同賃金カット付加金

8,326円

(7) 慰謝料合計

2,700,000円

総合計

8,137,445円

原告番号11 氏名 伊東幸一

(1) 手当差額合計

877,468円

(2) 寸志・紹介料差額合計

3,340,340円

(3) 一時金差額合計

539,100円

(4) 街頭宣伝賃金カット額

80,416円

(5) 昇給差別額

5,951円

(6) 臨時大会賃金カット額

――

(7) 慰謝料合計

2,700,000円

総合計

7,543,275円

原告番号12 氏名 山下兼二

(1) 手当差額合計

1,662,039円

(2) 寸志・紹介料差額合計

3,410,382円

(3) 一時金差額合計

637,300円

(4) 街頭宣伝賃金カット額

――

(5) 昇給差別額

2,748円

(6) 臨時大会賃金カット額

10,215円

同賃金カット付加金

10,215円

(7) 慰謝料合計

2,700,000円

総合計

8,432,899円

原告番号13 氏名 松下末広

(1) 手当差額合計

1,179,354円

(2) 寸志・紹介料差額合計

4,420,620円

(3) 一時金差額合計

585,800円

(4) 街頭宣伝賃金カット額

56,133円

(5) 昇給差別額

230円

(6) 臨時大会賃金カット額

――

(7) 慰謝料合計

2,700,000円

総合計

8,942,137円

原告番号14 氏名 中田郁夫

(1) 手当差額合計

1,330,838円

(2) 寸志・紹介料差額合計

2,105,223円

(3) 一時金差額合計

845,900円

(4) 街頭宣伝賃金カット額

71,372円

(5) 昇給差別額

3,932円

(6) 臨時大会賃金カット額

――

(7) 慰謝料合計

2,700,000円

総合計

7,057,265円

別紙(八)

寸志・紹介料損害金計算表

番号

氏名

差別開始前

(93年3月16日以前)の寸志・紹介料月額(A)

(☆は平均金額、他は記録金額)

93年度寸志紹介料の実際受領額(B)

(全て実際記録金額)

93年3月16日~同年11月5日の財産的損害額

(A×7.8か月)

90年11月6日~94年6月末日の財産的損害額

({A~B}×44.4か月)

合計

2

松木正行

13万0750円

3万5641円

101万9850円

422万2839円

524万2689円

3

松村昭男

11万4610円

3万3375円

89万3958円

360万6834円

450万0792円

4

坂正治

9万8705円

3万6242円

76万9899円

277万3357円

354万3256円

5

谷口照雄

8万5541円

4万6017円

66万7220円

175万4880円

242万2100円

6

水沢勝三

7万4116円

3万1300円

57万8105円

190万1030円

247万9135円

7

松村高喜

☆ 9万4913円

3万8675円

74万0321円

249万6967円

323万7288円

8

奥田拓央

☆ 9万4913円

2万8225円

74万0321円

296万0947円

370万1268円

9

佐藤利行

☆ 9万4913円

2万8292円

74万0321円

295万7972円

369万8293円

10

道方義夫

☆ 9万4913円

3万4692円

74万0321円

267万3812円

341万4133円

11

伊東幸一

☆ 9万4913円

3万6354円

74万0321円

260万0019円

334万0340円

12

山下兼二

6万5333円

0円

50万9597円

290万0785円

341万0382円

13

松下末宏

12万2416円

4万4358円

95万4845円

346万5775円

442万0620円

14

中田郁夫

6万7833円

3万2302円

52万9097円

157万6126円

210万5223円

別紙(一二)

年度別差額金額一覧表

組合員氏名 松木正行

残業手当

泊手当

走行キロ手当

差額合計

89年

752,503

90,000

127,334

90年

343,325

28,000

64,138

89年との差額

-409,178

-62,000

-63,196

-534,374

91年

643,069

41,000

77,650

89年との差額

-109,434

-49,000

-49,684

-208,118

92年

650,638

54,000

75,858

89年との差額

-101,865

-36,000

-51,476

-189,341

93年

680,422

45,000

82,657

89年との差額

-72,081

-45,000

-44,677

-161,758

差額合計

-692,558

-192,000

-209,033

-1,093,591

(単位円)

組合員氏名 松村昭男

残業手当

泊手当

走行キロ手当

差額合計

89年

801,601

96,000

130,920

90年

468,427

34,000

70,986

89年との差額

-333,174

-62,000

-59,934

-455,108

91年

802,297

67,000

100,942

89年との差額

696

-29,000

-29,978

-58,282

92年

632,969

65,000

101,572

89年との差額

-168,632

-31,000

-29,348

-228,980

93年

515,126

67,000

87,752

89年との差額

-286,475

-29,000

-43,168

-358,643

差額合計

-787,585

-151,000

-162,428

-1,101,013

(単位円)

組合員氏名 坂正治

残業手当

泊手当

走行キロ手当

差額合計

89年

915,373

94,000

133,360

90年

37,694

7,000

9,744

89年との差額

-877,679

-87,000

-123,616

-1,088,295

91年

496,097

50,000

84,076

89年との差額

-419,276

-44,000

-49,284

-512,560

92年

653,172

57,000

88,496

89年との差額

-262,201

-37,000

-44,864

-344,065

93年

604,431

48,000

82,136

89年との差額

-310,942

-46,000

-51,224

-408,166

差額合計

-1,870,098

-214,000

-268,988

-2,353,086

(単位円)

組合員氏名 谷口照雄

残業手当

泊手当

走行キロ手当

差額合計

89年

751,747

90,000

129,706

90年

311,506

33,000

68,100

89年との差額

-440,241

-57,000

-61,669

-558,910

91年

620,884

67,000

101,446

89年との差額

-130,863

-23,000

-28,260

-182,123

92年

688,146

73,000

98,128

89年との差額

-63,601

-17,000

-36,578

-117,179

93年

620,491

67,000

94,672

89年との差額

-131,256

-23,000

-35,034

-189,290

差額合計

-765,961

-120,000

-161,541

-1,047,502

(単位円)

年度別差額金額一覧表

組合員氏名 水澤勝三

残業手当

泊手当

走行キロ手当

差額合計

89年

626,981

93,000

118,774

90年

348,453

73,000

110,572

89年との差額

-278,528

-20,000

-8,202

-306,730

91年

486,094

68,000

90,728

89年との差額

-140,887

-25,000

-28,046

-193,933

92年

558,364

83,000

90,302

89年との差額

-68,617

-10,000

-28,472

-107,089

93年

588,107

75,000

96,672

89年との差額

-38,874

-18,000

-22,102

-78,976

差額合計

-526,906

-73,000

-86,822

-686,728

(単位円)

組合員氏名 松村高喜

残業手当

泊手当

走行キロ手当

差額合計

89年

631,945

95,000

127,896

90年

285,226

23,000

63,430

89年との差額

-346,719

-72,000

-64,466

-483,185

91年

416,555

26,000

63,710

89年との差額

-235,150

-70,000

-64,186

-369,336

92年

504,423

60,000

85,950

89年との差額

-127,522

-35,000

-41,946

-204,468

93年

500,361

53,000

89,276

89年との差額

-131,584

-42,000

-38,620

-212,204

差額合計

-840,975

-219,000

-209,218

-1,269,193

(単位円)

組合員氏名 奥田拓央

残業手当

泊手当

走行キロ手当

差額合計

89年

528,214

26,000

61,632

90年

246,038

17,000

50,878

89年との差額

-282,176

-9,000

-10,760

-301,360

91年

474,692

39,000

71,148

89年との差額

-53,522

13,000

9,516

-31,006

92年

410,927

45,000

76,560

89年との差額

-117,287

19,000

14,928

-83,359

93年

436,068

44,000

78,594

89年との差額

-92,146

18,000

16,942

-57,184

差額合計

-545,131

41,000

30,626

-473,479

(単位円)

組合員氏名 佐藤利之

残業手当

泊手当

走行キロ手当

差額合計

89年

566,033

98,000

134,776

90年

274,820

22,000

58,402

89年との差額

-218,217

-76,000

-81,470

-375,687

91年

445,856

34,000

77,000

89年との差額

-199,997

-64,000

-62,572

-326,569

92年

401,390

49,000

75,242

89年との差額

-164,643

-49,000

-64,330

-277,973

93年

560,017

48,000

86,940

89年との差額

-25,997

-50,000

-61,423

-137,420

差額合計

-608,854

-239,000

-269,795

-1,117,649

(単位円)

年度別差額金額一覧表

組合員氏名 道方義夫

残業手当

泊手当

走行キロ手当

差額合計

89年

630,071

84,000

112,088

90年

217,899

23,000

52,778

89年との差額

-412,172

-61,000

-59,310

-532,482

91年

478,584

36,000

70,638

89年との差額

-151,487

-48,000

-41,450

-240,937

92年

498,767

51,000

79,984

89年との差額

-131,304

-33,000

-32,104

-196,408

93年

470,557

55,000

78,330

89年との差額

-159,514

-29,000

-33,758

-222,272

差額合計

-854,477

-171,000

-166,622

-1,192,099

(単位円)

組合員氏名 伊東幸一

残業手当

泊手当

走行キロ手当

差額合計

89年

615,452

87,000

119,424

90年

253,536

29,000

66,956

89年との差額

-361,916

-63,000

-52,468

-477,384

91年

567,966

70,000

102,762

89年との差額

-47,486

-20,000

-16,662

-84,148

92年

539,899

66,000

97,972

89年との差額

-75,553

-30,000

-21,452

-127,005

93年

492,687

55,000

91,260

89年との差額

-122,767

-38,000

-28,164

-188,931

差額合計

-607,722

-151,000

-118,746

-877,468

(単位円)

組合員氏名 山下兼二

残叢手当

泊手当

走行キロ手当

差額合計

89年

515,731

72,000

101,272

90年

211,507

19,000

46,784

89年との差額

-304,224

-53,000

-54,488

-411,712

91年

611,395

69,000

105,310

89年との差額

95,664

-3,000

4,130

96,794

92年

21,751

6,000

3,134

89年との差額

-493,980

-66,000

-98,138

-658,118

93年

0

0

0

89年との差額

-515,731

-72,000

-101,272

-689,003

差額合計

-1,218,271

-194,000

-249,768

-1,662,039

(単位円)

組合員氏名 松下末宏

残業手当

泊手当

走行キロ手当

差額合計

89年

578,498

91,000

135,940

90年

270,898

26,000

62,306

89年との差額

-307,600

-65,000

-73,634

-446,234

91年

452,382

58,000

101,624

89年との差額

-126,116

-33,000

-34,316

-193,432

92年

420,428

57,000

90,532

89年との差額

-158,070

-34,000

-45,408

-237,478

93年

370,808

52,000

80,480

89年との差額

-207,690

-39,000

-55,520

-302,210

差額合計

-799,476

-171,000

-208,878

-1,179,354

(単位円)

年度別差額金額一覧表

組合員氏名 中田郁夫

残業手当

泊手当

走行キロ手当

差額合計

89年

708,037

88,000

127,866

90年

272,269

17,000

55,456

89年との差額

-435,945

-71,000

-72,410

-579,355

91年

595,101

53,000

90,802

89年との差額

-113,113

-35,000

-37,064

-185,177

92年

507,937

55,000

88,416

89年との差額

-200,277

-33,000

-39,450

-272,727

93年

500,071

51,000

79,430

89年との差額

-208,143

-37,000

-48,436

-293,579

差額合計

-957,478

-176,000

-197,360

-1,330,838

(単位円)

別紙(一三)

一時金差額一覧表

組合員氏名 松木正行

89

90

91

92

93

94

支給額

613,200

477,400

520,000

525,000

448,400

89年との差額

-135,800

-93,200

-88,200

-164,800

支給額

657,300

543,100

546,000

550,000

435,000

89年との差額

-114,200

-111,300

-107,300

-222,300

差額合計

-250,000

-204,500

-195,500

-387,100

組合員氏名 松村昭男

89

90

91

92

93

94

支給額

510,300

412,900

480,000

525,000

450,800

89年との差額

-97,400

-30,300

-14,700

-59,500

支給額

567,400

514,000

504,000

510,000

430,000

89年との差額

-53,400

-63,400

-57,400

-137,400

差額合計

-150,800

-93,700

-42,700

-196,900

組合員氏名 坂正治

89

90

91

92

93

94

支給額

518,200

334,354

390,000

430,000

376,000

89年との差額

-183,846

-128,200

-88,200

-142,200

支給額

553,400

433,600

419,500

410,000

323,500

89年との差額

-119,800

-133,900

-143,400

-229,900

差額合計

-303,646

-262,100

-231,600

-372,100

組合員氏名 谷口照雄

89

90

91

92

93

94

支給額

497,100

382,700

460,000

475,000

398,900

89年との差額

-114,400

-37,100

-22,100

-98,200

支給額

513,900

466,500

483,000

480,000

370,000

89年との差額

-47,400

-30,900

-33,900

-143,900

差額合計

組合員氏名 水沢勝三

89

90

91

92

93

94

支給額

436,500

322,500

410,000

400,000

362,300

89年との差額

-114,000

-26,500

-36,500

-74,200

支給額

474,200

411,200

437,400

430,000

345,000

89年との差額

-63,000

-36,800

-44,200

-129,200

差額合計

-177,000

-63,300

-80,700

-203,400

組合員氏名 松村高喜

89

90

91

92

93

94

支給額

399,800

277,500

380,000

395,000

342,100

89年との差額

-122,300

-19,800

-4,800

-57,700

支給額

458,900

377,800

303,300

400,000

310,000

89年との差額

-81,100

-155,600

-58,900

-148,900

差額合計

-203,400

-175,400

-63,700

-206,600

組合員氏名 奥田拓央

89

90

91

92

93

94

支給額

397,900

259,100

390,000

370,000

335,800

89年との差額

-138,800

-7,900

-27,900

-62,100

支給額

410,300

349,300

400,600

390,000

325,000

89年との差額

-61,000

-9,700

-20,300

-85,300

差額合計

-199,800

-17,600

-48,200

-147,400

組合員氏名 佐藤利之

89

90

91

92

93

94

支給額

399,900

276,400

370,000

325,000

322,800

89年との差額

-123,500

-29,900

-74,900

-77,100

支給額

425,100

337,300

308,000

390,000

270,000

89年との差額

-87,800

-117,100

-35,100

-155,100

差額合計

-211,300

-147,000

-110,000

-232,200

組合員氏名 道方義夫

89

90

91

92

93

94

支給額

383,100

267,300

380,000

380,000

335,400

89年との差額

-115,800

-3,100

-3,100

-47,700

支給額

457,000

355,600

391,100

390,000

315,000

89年との差額

-101,400

-65,900

-67,000

-142,000

差額合計

-217,200

-69,000

-70,100

-189,700

組合員氏名 伊東幸一

89

90

91

92

93

94

支給額

549,700

440,300

500,000

525,000

457,500

89年との差額

-109,400

-49,700

-24,700

-92,200

支給額

567,300

521,100

525,000

530,000

430,000

89年との差額

-46,200

-42,300

-37,300

-137,300

差額合計

-155,600

-92,000

-62,000

-229,500

組合員氏名 山下謙二

89

90

91

92

93

94

支給額

478,600

300,600

460,000

300,000

381,500

89年との差額

-178,000

-18,600

-178,600

-97,100

支給額

459,800

409,300

477,600

450,000

337,300

89年との差額

-50,500

-17,800

-9,800

-122,500

差額合計

-228,500

-800

-188,400

-219,600

組合員氏名 松下末宏

89

90

91

92

93

94

支給額

432,000

308,600

390,000

380,000

340,700

89年との差額

-123,400

-42,000

-52,000

-91,300

支給額

449,800

393,200

419,500

400,000

309,400

89年との差額

-56,600

-30,300

-49,800

-140,400

差額合計

-180,000

-72,300

-101,800

-231,700

組合員氏名 中田郁夫

89

90

91

92

93

94

支給額

511,500

380,300

450,000

425,000

372,000

89年との差額

-131,200

-61,500

-86,500

-139,500

支給額

534,300

457,300

472,500

450,000

360,200

89年との差額

-77,000

-61,800

-84,300

-174,100

差額合計

-208,200

-123,300

-170,800

-313,600

別紙(一四)

認容額の内訳

原告組合

慰謝料

弁護士費用

総合計

2,000,000円

200,000円

2,200,000円

原告ら(1)

原告名

手当差額合計

寸志、紹介料差額合計

(H3.9.30~H6.6.30)

一時金差額

出勤停止命令

賃金カット額

松木正行

717,913円

111,300円

90,405円

松村昭男

717,913円

63,400円

坂正治

717,913円

133,900円

谷口照雄

717,913円

30,900円

水澤勝三

717,913円

36,800円

松村高喜

27,395円

717,913円

155,600円

奥田択央

148,294円

717,913円

9,700円

佐藤利之

104,961円

717,913円

117,100円

道方義夫

19,615円

717,913円

65,900円

伊東幸一

717,913円

42,300円

山下兼二

1,200,827円

717,913円

松下末宏

161,404円

717,913円

30,300円

中田郁夫

717,913円

61,800円

原告ら(2)

原告名

平成4年6月

賃金カット額

賃金カット付加金額

慰謝料額

総合計

松木正行

12,915円

12,915円

300,000円

1,245,448円

松村昭男

11,954円

11,954円

200,000円

1,005,221円

坂正治

11,450円

11,450円

200,000円

1,074,713円

谷口照雄

11,057円

11,057円

200,000円

970,927円

水澤勝三

9,334円

9,334円

200,000円

973,381円

松村高喜

8,626円

8,626円

200,000円

1,118,160円

奥田択央

8,469円

8,469円

200,000円

1,092,845円

佐藤利之

8,530円

8,530円

200,000円

1,157,034円

道方義夫

8,326円

8,326円

200,000円

1,020,080円

伊東幸一

200,000円

960,213円

山下兼二

10,215円

10,215円

200,000円

2,139,170円

松下末宏

200,000円

1,109,617円

中田郁夫

200,000円

979,713円

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